大西風雅&岡崎彪太郎の親友の絆 『ナイボー!』稽古場レポート到着
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タイトルの『ナイボー!』とは、キャッチボールをしているときの掛け声「ナイスボール!」の略だ。ヨウスケは父親とキャッチボールをするたびに、幾度となくこの言葉を聞いてきた。その父・尊を演じるのは山内圭哉。小気味のいいセリフ回しで、すべての言葉に説得力を持たせていく。どのシーンでもドンと構える存在感は父親としての威厳も感じさせ、それを受ける大西も安心感があるのか、回想シーンでは身を委ねるように肩の力を抜いて父親と向き合っているように見えた。
また、尊の親友である三枝役には宇野祥平。高校野球の強豪・伊澄高校で監督を務めるこの役を、宇野は穏やかな口調ながら風格のある芝居で魅せ、野球部員との会話にも心地よい緊迫感を与えていく。そうかと思えば、尊とともに将来有望なヨウスケに期待を寄せる場面では、永遠の野球少年のように静かな興奮をのぞかせる。微細に変化をつけ、場面に血を通わせていく演技。その技の高さに思わず唸ってしまう。
一方、登場するたびに稽古場に笑いをもたらしたのが、ハルタが通う志野原高校・赤木監督役の水野美紀だ。フランクなキャラクターゆえ、芝居に毎回少しずつ変化を加えていくと、呼応するかのように岡崎ら野球部員たちの動きにも新しさが増え、どんどんとシーンが立体的になっていく。また、演出の眞鍋から「今のアイデアはすごくおもしろかったです」と感想が送られると、まわりのキャストたちとハイタッチで喜ぶ姿も。主人公の父の急逝という重みのある物語が根底に流れている作品だけに、志野原高校の場面はほっとひと息つける、癒しの時間のようにも感じられた。
そして、ヨウスケを優しく見守る母・郁美を演じる安達祐実もまた、わずかな心の動きを場面ごとに魅せていく。人は、状況や環境に合わせていくつもの表情を使い分けているものだ。安達の演技からはそれらが仔細に伝わってくる。ヨウスケの心根が知りたくて頑張る母としての姿、夫・尊との思い出をいつまでも大切に持ち続ける妻としての顔、ハルタや三枝の前だけで見せる少し弱い自分……。また、こうした演じ分けだけでなく、演出からの「今のお芝居にもう少し余韻をもたせたい」という高度な要求にも即座に応えていく。この日の稽古ではまだ見られなかったが、終盤でヨウスケと郁美が本音で語り合う場面では、2人がどのような芝居を見せてくれるのか。ますます本番が楽しみになった。
もう一つ、横山作品の特徴として挙げられるのが、登場人物の一人ひとりに人生観が感じられるところだ。物語を進めるうえでの説明的なキャラクターは1人も存在せず、それぞれが重要な役割を担っている。そのことを眞鍋も熟知しているため、非常に細かい部分にも演出の意識が注がれる。それが垣間見えたのが、ハルタとチームメイト同士との試合後の場面だ。1年生ながらレギュラーとして活躍するハルタに対し、仲間は軽口を叩いて茶化す。最初の立ち稽古では非常にスムーズな掛け合いに思えたが、眞鍋は「役者同士で自然な流れを作ろうとしているのが見えてしまうのがもったいない」と指摘。「他愛もない会話の中にも、どこかハルタに嫉妬しているのが見え隠れする感情が欲しい」とリクエストを出す。こうした細かな積み重ねが、作品全体に漂う重厚感や人間ドラマを生み出しているのだろう。
この物語の登場人物たちは、それぞれに悩み、もがき、苦しみ、それでも一歩ずつ前に進んでいく。彼らが求めるもの、目指す先は何なのか。今後の残りの稽古でさらに役者たちの芝居が深化していくことを楽しみにしつつ、その答えを劇場で確かめたい。
(取材・文:倉田モトキ 写真:加藤春日)
舞台『ナイボー!』は、9月30日から10月18日に東京建物 ぴあ シアター、10月22日から25日に梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて上演。
【公演概要】
舞台『ナイボー!』
【公演日程】9月30日〜10月18日
【会場】東京建物 ぴあ シアター
◆大阪公演
【公演日程】10月22日〜25日
【会場】梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
【脚本】横山拓也
【演出】眞鍋卓嗣
【出演】
大西風雅 岡崎彪太郎
安達祐実 水野美紀 宇野祥平 山内圭哉
満腹満 池之上頼嗣 井上拓哉 松尾敢太郎 宮瀬隼 徳留洸稀 富田黎 小島佳大
【製作】TBS
【公式サイト】https://niceball-stage.com/
【公式X】 https://x.com/niceball_stage