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江本純子×鈴木みのり、マイノリティが安心して観られる作品を目指して──『真夜中に寂しくなったときに観たい演劇』

演劇

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江本純子

鈴木みのり

◆語れるクリエイターを増やしていくという課題


鈴木みのり
――レズビアンに向けた作品とした時に、創作面においても様々な課題があるように思います。

鈴木:まずクリエイティブの主体である演出家、作家、プロデューサーなどはもちろん、俳優や、いろんなスタッフのなかに性的マイノリティである人が増える必要があると思います。そのマイノリティ性と関わるテーマを表すうえで、あるいはそのマイノリティ性を持った個人の物語をただ描くだけであっても、照明はどうするかとか美術はどうだとか一緒に考えるために、「ただそこにいる」というまでの歴史や背景を説明するコストばかりかかってしまいます。マイノリティが出てくるのに、作り手がマジョリティだらけだと物語が説明的になってしまったり、説明しないとマジョリティにはわからないと直しを迫られたりするとかも起こるんじゃないかな。

江本:それで今回「レズビアンの衣装家がいい!」と思って探したんですが、見つけられませんでした。実感として、ゲイやレズビアンの衣装家と、ヘテロの衣装家の衣装は色気の度合いと種類がまるで違うんです。いろんな舞台を観ても、色気がなくてドキドキしないんですよね。

鈴木:わかりますー! 色気大事! 前に、異性愛の方が演出した同性愛をテーマにしたある演劇を観たとき、同性愛のふたりのあいだで惹かれ合う感じに説得力が感じられなく、「あれ? このシーンって色気の交換が感じられるのが物語のキーなんじゃないの?」と思ったんですね。もちろん、演出家がゲイやレズビアンやバイセクシュアルでなくても、スタッフ起用でそういうものを生じさせる可能性を探ることもできると思うんです。ドラマ『ユーフォリア/EUPHORIA』のハンター・シェイファー演じるトランスな女子ジュールズの衣装やメイクもすばらしかったですし、ハンターに監督・脚本のサム・レヴィンソンが聞き取って書いたというシーズン1のジュールズの物語には、色気がちゃんとありました。

江本:色気が伝わってこないのは、たぶんシス・ヘテロ規範でスタイリングや演出をしているからでしょうね。私個人の表現としては「レズビアン最高じゃん!ゴージャスじゃん!」っていうものを作りたいんですよ。そのためには、自身がマイノリティでなくてもいいのですが、マイノリティについての感覚や認識を共有できる人とクリエイションしたいです。

鈴木:昨年ニューヨークで、ユダヤの非常に厳格な宗派「ハシディズム」のコミュニティ出身で、トランスフェミニンの方が書いた自伝を原作にした演劇を観たんです。作・演出の方も主演の方もトランスフェミニンで、同じ宗派ではないけどユダヤにルーツがあって、また出資者にもトランスのコミュニティの人たちが名を連ねていたんですね。客席での会話や雰囲気からもトランスの人たちを包摂しているコミュニティの観客だとわかる。今回の江本さんの作品が「レズビアンのため」をうたっているように、まずそこで描かれているマイノリティである人たちやそのコミュニティに向けた作品だということですね。そういう場だと観客が「似たような立場のスタッフが関わっているなら安心して観られる」という面があると思います。それに癒しや勇気にもなっている。もちろん単に属性が近いからというだけでなく、能力やセンスが優れている・期待できるというのも大事という前提ですけど……。

江本:少なくとも日本では客席だけでなく、創作においても100%安心できてはいないのが現状です。俳優としては、性的なシーンや恋愛感情に関わるシーンの稽古の時にアイデンティティについて踏み込んで聞かれてしまうようなことから、ツアーや滞在制作先で、コミュニケーションの場として銭湯や温泉に「みんなで行こう」となるような場面まで、創作における様々な工程のなかでマイノリティの体や心がずっと脅かされている状況があります。

鈴木:あと、単に労働環境の問題だけでなく、同じ現場にたとえばトランスの照明さんやレズビアンの音響さんがいれば、労働環境としてもクリエティブとしても、変わる・前進する可能性があるのかなと思います。一人か二人、性におけるマイノリティ性を持つ作り手や俳優がいる、で済ませるだけじゃなく。

江本:そうですね。ただ、認識を共有できる人材を育成する場がないという課題はあります。

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◆監修、広報──構造としての課題

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【公演概要】

舞台芸術祭「秋の隕石2026東京」 ジュンコエモト『真夜中に寂しくなったときに観たい演劇』via Tokyo Metropolitan Theatre
舞台芸術祭「秋の隕石2026東京」ジュンコエモト『真夜中に寂しくなったときに観たい演劇』via Tokyo Metropolitan Theatre メインビジュアル グラフィックデザイン:松本弦人

舞台芸術祭「秋の隕石2026東京」 ジュンコエモト『真夜中に寂しくなったときに観たい演劇』via Tokyo Metropolitan Theatre

◆日程・会場
10月16日~18日:東京・東京芸術劇場 シアターイースト

◆作・演出・出演
江本純子

◆音楽
山中透

◆美術
南志保

【公式サイト】https://autumnmeteorite.jp/ja/2026/program/junkoemoto
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