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江本純子×鈴木みのり、マイノリティが安心して観られる作品を目指して──『真夜中に寂しくなったときに観たい演劇』

演劇

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◆監修、広報──構造としての課題


舞台芸術祭「秋の隕石2026東京」ジュンコエモト『真夜中に寂しくなったときに観たい演劇』via Tokyo Metropolitan Theatre メインビジュアル グラフィックデザイン:松本弦人
――構造を変えるために『監修』が入ることもよくありますよね。

鈴木:それは本当に構造を変え得るんでしょうか? 「監修」を入れておけばいい、それでおしまいというのは本当に悪しき習慣だと思います。先ほども言ったんですが、「LGBT」や「クィア」という言葉ばかりが先行して、シスジェンダー・異性愛の社会や産業の構造における困難を含めた、生きている実態というのが日本ではまだまだ共有されてないですよね。「当事者」という言葉をわたしは使わないようにしているんですが、その言葉でわかった気になったり、「“当事者”を入れておけばいい」という監修の傾向もあったりして、それでは「マジョ中心の構造」は揺るがないですよね。そのマイノリティ性に関する研究者やメディア従事者であっても、クリエイションというのは知識だけではできないですよね。それに、制作の流れや現場にふれられず、スポットで「脚本を読んでください」「演技を見てください」「演出に意見をください」と言われても、土台ができて揺るがないものに対して修正や提案をするのは非常に難しい。できても限定的になるはずなんですよね。

江本:監修だとクリエイションのコアに入れないってことですよね。

鈴木:本来は、そのマイノリティ性を持つ人が演劇や映画やテレビドラマといった創作の産業で、当たり前に働ける、挑戦できるという機会を作るのがまず大事なはず。なのに、監修という肩書によって「この作品はしっかりしていますよ」という太鼓判や、構造の問題をスルーしている状況にお墨付きを与えてしまうケースをいくつも見てきました。それじゃ結局「教え役」ばかり引き受けさせられるわけですよね。作品の外部、構造の外部に置かれ続ける。

江本:その監修もたぶん多くの場合がマジョリティのためになっていて、それが問題なんですよね。

鈴木:マイノリティ性を明かせというのはカミングアウトの強制になってしまう危うい面もある。だからせめて、そのマイノリティ性を持つ人たちのために、日頃から何かしているというのなら、マジョリティとして作り手の主体である人が、そのマイノリティ性をテーマとして扱うというのも、まだ理解できなくもないんです。性的マイノリティに関する作品を作るなら、たとえばHIV啓発の活動をしているとか、トランスの人たちが働き続けられる環境作りのために動いているとか、普段からごはん食べに行ってよく話してるとか。ニューヨークでは、そういった、マイノリティだからこそ不足している福祉や教育、医療の供給をするコミュニティと、文化・芸術のコミュニティが重なっているのを見ました。

江本:それらのコミュニティと重なることで守られやすくなる可能性はありますね。マイノリティ性を明かすかどうかは、最近では自分で選べる環境に少しずつなりつつあるかとは思います。ただ、こちらとしては自分のことを開示するかどうかの負担だけでなく、開示した時にそれを聞いた相手がどうリアクションするかまで含めて、先回りして請け負う癖がついてしまっている面はあります。

――江本さんが「レズビアンに向けた演劇」と明言することも安心の要素ですよね。

鈴木:一方で、最近も日本の映画・テレビドラマ産業で、作り手の主体がシス・ヘテロである人たちが、ゲイやレズビアンといった同性愛をテーマにしながら、その呼称を使わないで広報する作品があってショックでした。

江本:そう。だから私は、東京芸術劇場で「レズビアン」と言っていこうと思う。もちろん「公共の場でレズビアンという言葉を出して欲しくない」というレズビアンの人がいるのもよくわかるんですけど。

――もしかすると、プロデューサーや監督が「レズビアン」という言葉を使い慣れてなさすぎてはっきり口に出せないという可能性もあるのかもしれません。

鈴木:確かにそうかも……! 日頃からそういった人たちと接していたら言い慣れると思うし、だからこそ言葉として出せないんでしょうね。その言葉が必要で生まれて、引き受けられてきた何かを、その呼称を口にするときの重みのようなものから、口ごもったり言い出せなかったりするのかもしれない。

江本:責任を引き受けるのには負荷がかかるんでしょうね。

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◆創作現場だけでなく、上演場所としても可能性を探していく

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【公演概要】

舞台芸術祭「秋の隕石2026東京」 ジュンコエモト『真夜中に寂しくなったときに観たい演劇』via Tokyo Metropolitan Theatre
舞台芸術祭「秋の隕石2026東京」ジュンコエモト『真夜中に寂しくなったときに観たい演劇』via Tokyo Metropolitan Theatre メインビジュアル グラフィックデザイン:松本弦人

舞台芸術祭「秋の隕石2026東京」 ジュンコエモト『真夜中に寂しくなったときに観たい演劇』via Tokyo Metropolitan Theatre

◆日程・会場
10月16日~18日:東京・東京芸術劇場 シアターイースト

◆作・演出・出演
江本純子

◆音楽
山中透

◆美術
南志保

【公式サイト】https://autumnmeteorite.jp/ja/2026/program/junkoemoto
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