永遠の名作『ロッキー4』をスタローンが再編集 追加シーンと音楽が再び感動をもたらす
シルヴェスター・スタローンを象徴する『ロッキー』シリーズ。近年のスピンオフ『クリード』シリーズまで含めれば8作品を数え、その中でも最大のヒット作として今なお愛されているのが『ロッキー4/炎の友情』だ。この度、その『ロッキー4』がスタローン自身の手によって新しく生まれ変わる。その“新しい『ロッキー4』”こと『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』は、アメリカでは昨年11月に一晩限りの限定上映として公開されたが、なんとここ日本では、幸運なことにロードショーという形で8月19日より劇場にて公開中。そこで本稿では、改めて『ロッキー4』の魅力を振り返りつつ、再構成版『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』の見どころについて解説していきたい。
【写真】喪服のロッキーとエイドリアンが語る未公開シーンも 『ロッキーVSドラゴ』場面写真
■時代背景によって不当に評価された『ロッキー4』
コロナ禍でのロックダウンに際し新作の撮影がストップしたスタローンは、その時間を利用して、かねてから望み通りの作品に編集し直したいと思っていた『ロッキー4』の再編集に取り組んだ。映画を完成させた1985年以来、見返すこともなかった映像素材は膨大な量があり、観客に対し全く違う『ロッキー4』体験を提供できると思ったのだという。
1985年に公開された『ロッキー4』はシリーズ最大のヒット作だが、必ずしも絶賛された映画ではない。1985年は米ソ対立の冷戦時代、当時のレーガン米大統領はスタローンをホワイトハウスに招いて試写会を実施して称賛する一方で、ソ連サイドからは反共産主義映画として非難された。さらに同年にスタローン主演の『ランボー2/怒りの脱出』も公開されており、こちらの敵もソ連軍だ。時代背景としての政治的な設定は取り入れつつも、物語の核心、スタローンが主人公を通して描きたかったことは両作品とも決して政治をことさらに意識したものではなかった。にも関わらず、意図せずプロパガンダの道具にされてしまった『ロッキー4』と『ランボー2』は不当な評価を受け、(今となってはただのスタローンに対する嫌がらせにしか見えないが)その年のラジー賞を両作品で総ナメにしてしまう。まさに時代背景によって、作品の本質から離れた評価になってしまった。
■それでも『ロッキー4』が好き!
1976年の『ロッキー』から始まる長い歴史を持つ本シリーズだが、途中長いブランク期間もあり、ファンも「どのロッキーから入ったか」で思い入れもそれぞれだ。筆者にとっては、少年期にリアルタイムで鑑賞したこの『ロッキー4』が最も思い入れの強い1本。その魅力は、まずは何と言っても映画史上最高の悪役のひとりと言っても過言ではない、ドルフ・ラングレン演じるソ連の冷酷無比なボクサー、イワン・ドラゴの存在だ。終始無言でひたすら殺人パンチを繰り出す姿はまさに戦闘マシーン。その最強っぷりはシリーズでも群を抜き、あまりの強さにロッキーの盟友アポロ・クリードを帰らぬ人にしてしまう。その姿はまさに恐怖そのものだった。そんなほぼ勝ち目のなさそうな相手に対しても、ロッキーは友の無念を晴らすために立ち上がり、雪深いソ連の片田舎で原始的かつ厳しいトレーニングに励む。かたやソ連の科学力を駆使したハイテクトレーニングで体を仕上げていくドラゴ。この“対比トレーニングシーン”は本作の大きな見どころのひとつだ。
『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』より (C)2021 Machi Xcelsior Studios Ltd. All Rights Reserved.
そしてクライマックスのロッキー対ドラゴの試合も大興奮の連続。ロッキーは最強の敵との試合に臨み、何度もピンチに陥りながらそのたびに何度でも立ち上がる。そんなロッキーのひたむきな姿は、敵地ソ連の観客たちの心を動かし、あの冷徹な戦闘マシーン・ドラゴをも変えていく。試合に勝利したロッキーが最後に放つ「誰でも変われるのだ」というメッセージは、本作がただの復讐劇ではないことを示す、まさに涙なしには見られない名シーン。そんな熱いドラマがシリーズ最短の91分というテンポの速さで紡がれていく。