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『ライオン・キング』“6億本の毛”で描かれた究極のモッフモフ! CGとは思えない映像はいかに実現したか

映画

映画『ライオン・キング』(2019)
映画『ライオン・キング』(2019) 写真提供:AFLO

 「毛」――それは、CGでの表現が最も難しいもののひとつとして、長らくクリエイターたちを悩ませてきた。だが人類は時間と労力をかけ、着実に技術を進歩させた。そして、現段階で「CGによる毛」の最高峰映画と言える1本、“超実写版”『ライオン・キング』が、今年最後の金曜ロードショーに登場する。

【写真】“毛”の細かさが半端ない! 『ライオン・キング』“モッフモフ”ギャラリー

■“毛”の再現は難しい

 映画におけるCG表現は1982年公開のSF映画『トロン』から本格的に導入されたと言われている。そして1990年代に飛躍的に進化を遂げ、『ターミネーター2』(1991)や『ジュラシック・パーク』(1993)などのCG表現は世界的な注目を集め、それぞれ大ヒットを記録した。以降、現在に至るまで進歩を続けたCGは、今や映画のどこに使われているのかわからないほど自然に映像の中に定着し、大掛かりなものから、ちょっとした合成や処理など、まさに映画に無くてはならないものになった。

 そんな映画におけるCG表現だが、中でも特に難易度が高かった表現のひとつが“毛”だ。映画への本格登場から40年以上が経過したCGだが、こと“毛”においては、なかなかリアルなものが生み出せなかった。CGの成長が著しかった90年代から2000年代でさえ、実写映画においては、基本的に毛に覆われたものは実物をそのまま出すか、極力毛の少ないCGに限られてきたと言っていい。

映画『ライオン・キング』(2019) 写真提供:AFLO
 なぜ毛の表現がそれほど難しいのか。我々が普段何気なく目にし、特に意識もしていない“毛”だが、例えば風が吹けばそれぞれ独立して動き、光の反射もそれぞれ異なるという複雑なものである。それをCGで表現するには、毛の1本1本をキチンと描いた上でバラバラに動かし、それぞれの光の反射も表現しなければ、人間の目にはリアルに映らない。

 例えば、“ドライヤーで髪を乾かす”というシーンがあったとして、実写ならそれを撮影するのはたやすいが、CGでそれをやるとなると途端にハードルが上がるということだ。人間の髪の毛の数は約10万本と言われており、全身毛むくじゃらの猫に至っては、約100万本。それが今回の『ライオン・キング』のように大型動物、それもたくさん登場となるととんでもない労力が必要になる。

映画『ファイナルファンタジー』(2001)の主人公・アキ(右) 写真提供:AFLO
 90年代のCG黎明期から2000年代の過渡期は、映像処理を行うコンピューターの性能が追い付かず、とにかく制作に時間がかかった。例えば、2001年公開のフルCG映画『ファイナルファンタジー』は、主人公の女性・アキのリアルな描写が話題を呼んだが、髪の毛約6万本を描き、そのCGたった1秒間を完成させるまでに36時間のレンダリング(CGの映像化作業)時間を要したという。もしパソコン1台でやろうとした場合、30年近くかかる計算になる。当然パソコン1台では到底終わらない作業になるため、前述の『ジュラシック・パーク』などでは、CG制作会社は一般社員のPCまでかき集め、勤務時間後に朝までレンダリング作業を行っていたほどだ。

 CGの登場によって、確かにできることは増えた。しかしそれを完成させるまでにあまりに時間と労力がかかりすぎる。要するに割に合わない。それが特に毛のCGだった。

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■CGをさらに進化させた、フルCGアニメーション

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