吉岡里帆が30歳、強烈悪女から美しき女郎蜘蛛まで これまで“爪痕”残した役柄たち
その後も、映画やドラマでさまざまな役柄を演じるが、土壇場で踏みとどまる“カッコいい”キャラクターが何とも魅力的に映る。2018年公開の映画『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』では、声が小さすぎるストリートミュージシャンの明日葉ふうかを演じた。劇中ではギターを弾きながら熱唱するシーンがあるが、公開後の舞台あいさつでは、大勢の観客がいる前でギターを弾きながら生歌を披露。未経験から始めたギターを大観衆の前で弾きながらシャウトする姿は何とも清々しく、終わったあと涙ながらに背筋をピンと伸ばす姿も、やはり“カッコいい”という言葉がぴったりだった。
2019年公開の映画『見えない目撃者』では、事故で視力を失ってしまった中、ある事件の犯人を追いかける女性・浜中なつめを演じた。本作では、目が見えないという設定の中、困難に立ち向かう女性を好演。アクションを含め、敵に立ち向かう姿には、力強さを感じさせた。
さらに2022年には映画『ホリックxxxHOLiC』で、セクシーな女郎蜘蛛を演じ、美しいカッコよさを見せつけると、映画『ハケンアニメ!』でも、新人アニメ監督・斎藤瞳に扮し、無理難題を押し付けられる中、ギリギリで踏みとどまり前に進む、凛とした佇まいを見せた。
30代に突入し、今まで以上にさまざまなことを経験していくことで“カッコよさ”の深みは増していくだろう。一方で吉岡には「日清食品 どん兵衛」のCMで見せた「どんぎつね」のような“かわいい”も内在する。以前のインタビューで、「俯瞰(ふかん)して物事を見てしまってはもったいない」と、誰かを羨(うらや)んだり嫉妬したりする感情をプラスとして捉えているとも明かし、芯の強さも感じさせる。年を重ねるごとに、こうしたさまざまな要素が互いに相乗効果をもたらし、より磨きがかかった“カッコよさ”、“かわいさ”、“強さ”を見せるだろう吉岡の今後を、注目せずにはいられない。(文:磯部正和)