夏が来れば思い出す――昭和の“怖い話” 呪物に怪人、心霊スポットも
百鬼夜行の昭和を駆け抜けた怪人として、口裂け女はあまりにも有名だ。日本を席巻した噂の発生源を辿り、そのルーツを探る興味深い研究も進んでいるが、全盛期はその素性など知る由もない。学校帰りの夕刻に「わたし、きれい?」と問う通り魔が現れぬことをひたすら祈るばかりだった。
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正体不明の口裂け女は映画界も席巻。1979年8月公開のジョン・カーペンター監督の出世作『ハロウィン』は新聞広告に「この恐怖だけは口が裂けても話してはいけない!」と銘打ち、7月公開のイタリアンホラー『ザ・ショック』は割引券の裏面に、口裂け女のイラストを用いた保冷まくらの広告を掲載。夏休み興行の行方を話題の怪人の神通力に託した。
そもそも1979年は映画館に謎の怪人・怪物が跋扈した年。3月に封切られた『ゾンビ』は惑星爆発の怪電波を受けて人食い死人が甦り、11月公開の『ファンタズム』では異次元から死神が出現。同年最大の話題作『エイリアン』と『スーパーマン』は共に人知を超えた異星人との遭遇譚で、その極めつけが目から殺人光線を放つ宇宙人が出現する怪作『ザ・ダーク』だった。年末には宇宙の異変が地球滅亡を告げる『ノストラダムスの大予言2』が出版され、世界を支配するミステリアスな存在のパワーは絶対的となった。デタラメの極みだが、ロマンがあったなぁ。