ソニーの作戦はあり得ない? “F1ガチファン”に聞いた映画『F1(R)/エフワン』の感想が面白すぎた<前編>
鈴木:ちょっと難しい話ですが、ソニーがセーフティカーを出させるのは、セーフティカーが出た時に自分たちのチームだけピットインするとお得だからです。例えば2台が争っていて、どちらかが先にピットインした後にセーフティカーが出たとします。その場合、ピットに入っていなかった方のマシンがかなり得をします。先に入った方はライバルが時速300キロで通常通り走っているので20秒ぐらいロスしますが、セーフティカーが出ている間に入ったらライバルが低速でしか走れていないので12秒くらいのロスで済むんです。だからお得なんです。
映画『F1(R)/エフワン』場面写真 (C)2025 WARNER BROS.ENT.ALL RIGHTS RESERVED.
実際のレースでも、ギャンブルでずっとピットインせずにいて、誰かトラブルでセーフティカー出ろ~って祈りながら走っていることもあります。この辺は、初めてF1を観た方には分かりづらかったかもしれないですね。とにかく、ソニーの作戦は現実ではちょっとあり得ないかなと思います(笑)。
真面目な話をすると、F1は過去にアイルトン・セナの悲しい事故(※4)などを経験して、安全性向上に取り組んできました。ドライバーの頭部を守るヘイロー (Halo)というコックピット保護装置もその一つです。なので、F1がクラッシュを誘発する見せ方をよく許可したなとちょっと驚きました。もっとリアルにするなら、雨でクラッシュやセーフティカーも出やすい状況を利用する見せ方もありだったかなと個人的に思います。
稲生D:4度のワールドチャンピオンを誇るマックス・フェルスタッペン(レッドブル所属)が怒っていましたね。無線で「汚いぞ」って。
鈴木:あんまり汚い言葉を使いすぎると、逆にその人がペナルティ受けることもあるんですよ。
稲生D:じゃあFワードはあんまり使えないんですね。
鈴木:暴言や、運営批判も違反対象になります。そういう意味でもクラッシュシーンの見せ方はちょっと違和感がありましたが、エンターテインメントと割り切って楽しみました。
稲生D:無茶なことをやるブラピという描写だったということでしょうね。鈴木さんは普段映画をご覧にならないので、ブラッド・ピットに対する印象はあんまりなかったと思うんですけが、いかがでしたか。
映画『F1(R)/エフワン』場面写真 (C)2025 WARNER BROS.ENT.ALL RIGHTS RESERVED.
鈴木:めちゃくちゃかっこいいですね。ベタにかっこいいもの見ると、かっこいいという感想しか出てこないんだ、みたいな。でもこの人60歳超えてるんでしょ!? という(笑)。
稲生D:そうなんです。今61歳で、撮影当時は58歳くらいだと思うんですが、レーサーとしての振る舞いはいかがでしたか。
鈴木:レース中のミラーや計器を見る仕草がとても自然で、全く違和感がありませんでした。現役ドライバーのルイス・ハミルトンが製作総指揮に入っているので、リアルな動きをアドバイスしたのかもしれません。ソニー役のブラピだけでなく、ジョシュア(ダムソン・イドリス)もすごく自然でした。