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ソニーの作戦はあり得ない? “F1ガチファン”に聞いた映画『F1(R)/エフワン』の感想が面白すぎた<前編>

映画

■ソニーのモデルは…アロンソ? ドネリー?

稲生D:ブラッド・ピット演じるソニーのようなドライバーで、思い当たる人はいますか?

鈴木:まず現役ドライバーで近そうなのは、先ほど登場したフェルナンド・アロンソ(現アストンマーティン所属)。2回ワールドチャンピオンに輝いた凄いドライバーで、もうすぐ44歳です。今F1で40代は異例で、ハミルトン(昨年までメルセデス、現フェラーリ所属)もちょうど40歳でたった2名しか居ません。F1は体力と反射神経が必要で、劇中ソニーがテニスボールを使ってトレーニングをしていましたが、似たことをガスリー(アルピーヌ所属)という若い選手もよくやっています。反射神経は目が重要なので、40代になるとなかなか厳しくなってくる。だからベテランで活躍しているという意味では、アロンソが近いかなと。

映画『F1(R)/エフワン』場面写真 (C)2025 WARNER BROS.ENT.ALL RIGHTS RESERVED.
ちなみにアロンソは一度F1を離れて、ル・マン24時間レースで勝ったこともあるんです。ソニーがデイトナ24時間レースに出場していたのとなんだか似ていますね。ちなみにアロンソはインディ500にも出ていて、ル・マン24時間レースとF1のモナコGPの3つで「世界三大レース」と呼ばれるんですが、この制覇を目指していた(インディ500のみ優勝なし)。気概の面でも現役ドライバーではアロンソが近いかなと思うんですが、過去のドライバーも含めてだと…マーティン・ドネリーというドライバーです。

稲生D:ソニーがかつて走っていたF1のシーンも出てきました。

鈴木:そうなんです。映画の冒頭、昔のF1のオンボードシーンから始まりますが、派手にクラッシュしたところでソニーがハッと眠りから覚めます。あのシーンを見た時、「あ!」と思いました。(ソニーが乗っていたのは)1990年の黄色いロータスで、右に走ってるマクラーレン。あれセナじゃん!ちゃんとマルボロのロゴが出てる!みたいな。

稲生D:よくロゴまで見えましたね(笑)。

鈴木:マシンを見たら1990年と分かりました。黄色と緑のヘルメットを被っていて、もう明らかにセナ。当時のF1のエンジンってすごい音が大きかったんです。回想シーンのソニーが乗っている当時のロータスは、キャメルロータスのランボルギーニV12エンジン。僕が一番好きなエンジンなんですが、V12の凄まじい高音がIMAX上映で響き渡って、なんじゃこりゃあああ!って感動していたら、ソニーがすぐ夢から覚めちゃって。まだ起きなくていいのにと思いました(笑)。

映画『F1(R)/エフワン』場面写真 (C)2025 WARNER BROS.ENT.ALL RIGHTS RESERVED.
そしてこのロータスに当時乗っていたのが、マーティン・ドネリーなんです。劇中のソニーの事故映像は、実際にドネリーがスペインGP予選で遭ったもので、あのまんまです。車がまっぷたつに割れ、コクピットから投げ出され、足が異常な方向に曲がっている姿が当時テレビに映りました。細かい点は修正しているかもしれませんが、おそらく本物の映像が使われていると思います。僕たち世代のF1ファンには強烈なトラウマになる出来事で、ゆえに、ソニーがやってるクラッシュ誘発作戦はそんな軽々しいものじゃないぞ、という想いにも繋がるんです。エンドクレジットにドネリーへのスペシャルサンクスがあったのも、ソニーの背景に重ねている証拠だと思います。

稲生D:ドネリ―はF1に復帰したんですか?

鈴木:ドライバーとしての復帰を目指しましたがさすがにF1には戻れず、後進育成のためのチームを立ち上げたり、F1の審査委員であるスチュワードを担当したりと、レース界には関わっています。

劇中、ソニーがセナ、(アラン・)プロスト、(ナイジェル・)マンセルと争っていたというセリフがあったので、ソニーたちは当時輝くルーキーとして出てきた面々だと思います。ドネリーは残念ながらマシンにも恵まれず、上位で争うような活躍はできませんでした。でも1990年、同じ時期にデビューして大活躍したのが、ジャン・アレジという、後藤久美子さんと結婚したことで日本でもおなじみのフランス人ドライバーでした。アレジは1989年のシーズン途中でデビューして、フルシーズン参戦1年目だった1990年の開幕戦でセナと激しいトップ争いをして、その後もモナコGPでプロストと争って2位表彰台という大活躍をしました。ですので、ソニーはアレジとドネリーを組み合わせたものがモチーフとも言えると思います。

ドネリー本人はあのクラッシュ映像は見たくないものだと思いますが、F1を愛しているからこそこうして協力したのかなと。そう思うとジーンと来てしまいましたね。

>>まだまだ話は尽きない! 後編に続く!

 映画『F1(R)/エフワン』は公開中。

【鈴木淳史】
F1ファンコミュニティ「みんなでFトモ」管理人。ファン交流会イベントの開催や現地観戦情報の発信を中心に、“日本一、役に立つF1ファン”を目指して活動中。著書に鈴鹿サーキット公認「2025年鈴鹿GP 観戦ガイド」

【稲生D】
映画好きが集まるインターネット映画ファンコミュニティ「共感シアター」のディレクター兼MC。映画の同時再生番組や毎週の映画情報番組などを中心に、“好きな映画をさらに楽しむ”というコンセプトのもと活動中。

構成:編集部

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