愛され続ける『おいしい給食』を支えてきた歴代キャラクターたち<マニアが紹介する最重要人物>
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このシリーズにおける一服の清涼剤であり、甘利田の愛する給食を支える重要人物が給食のおばさんだ。シーズンごとにヒロインが交代しても、給食のおばさんこと牧野文枝は一貫していとうまい子が演じてきた。甘利田の給食愛を肌で見抜きながらも、ほどよい距離感で見守り、時におちゃめで、甘利田にとって聖域ともいえる配膳室にいつもいてくれる、安心と癒しの存在。
甘利田を除いて、『おいしい給食』唯一のシリーズ皆勤賞を誇る給食のおばさんは、まるでバランスよく考えられた給食のメニューのように、『おいしい給食』の世界を整える役割を担っている。
そしてseason2以降、給食のおばさんに似た立ち位置とも言える、駄菓子屋のおばちゃんが登場。甘利田にとって、日々を彩る新たな楽しみが放課後の駄菓子屋での買い食いだ。season2では木野花が、season3では高畑淳子が、持ち前の円熟味溢れる独特の芝居で演じており、毎話数分間とは思えない存在感を見せてきた。甘利田の“好き”を支える脇役的キャラクターたちも生き生きと描かれていることが、このドラマの強度をさらに強めている。
映画『おいしい給食 炎の修学旅行』場面写真 (C)2025「おいしい給食」製作委員会
■最重要人物(4)誰かを見守り、誰かに見守られて――甘利田を取り巻く人々
『おいしい給食』には大きな謎がある。給食の時間における甘利田の異常行動は、周りにどう見られているのか――という問題だ。あまりに誰も反応しないため、もしかするとライバル生徒とヒロインの先生、そして視聴者にしか見えていないのではないかと思ってしまう。その謎が明らかになる回が、season2に存在する。
第7話、迫る合唱コンクールの練習にいまいち熱が入らない生徒たちに、音楽教師が「給食前に校歌を歌う甘利田先生を見てください」と伝える。給食の前に必ず流れる校歌斉唱のシーンでは、甘利田は給食への期待を胸にノリノリで歌い、その動きは回を重ねるごとに激しさを増していく。それを見ていた生徒たちは、甘利田のように腕をブンブンさせて合唱をし始める。彼らにも甘利田の行動が見えているということが、ここで明らかになった。
さらにseason3には、甘利田に淡い恋心を抱く生徒マルヨネ(藤戸野絵)が、校歌斉唱でささやかに甘利田の動きを真似する姿が映し出され、視聴者の反響を呼んだ。また、甘利田の不可解な行動をいぶかしむ家庭科の教師が、調理実習を通してその異常さを周りに知らしめようと画策する。だが、生徒たちは甘利田の給食時の行動を意に介さない。
そう、生徒たちは甘利田の行動に気づいていても、それを止めたり本人に確かめることはしない。それは甘利田が給食に没入している時間、自分たちも自分たちで楽しむのだという姿勢であり、さらには「先生の好きなようにさせてあげよう」という、生徒たちの甘利田へのやさしさも垣間見えるのだ。
映画『おいしい給食 炎の修学旅行』場面写真 (C)2025「おいしい給食」製作委員会
それは他の教員たちも同様で、影で見守る人物として校長先生の存在も重要だ。酒向芳、酒井敏也、小堺一機と個性派に演じられてきた各シーズンの校長先生は、よき理解者として甘利田の給食愛を影から見守ってきた。
『劇場版 おいしい給食 Final Battle』で給食がなくなることが決まった際、校長先生(酒向)が真っ先に知らせたのが甘利田であった。「なぜ私にだけ」と問う甘利田に、校長が柔和な表情を浮かべ答える。「そりゃそうでしょ。うちで一番給食を愛してるのは甘利田先生じゃないですか」。校長は甘利田の給食偏愛がどれだけ行動にはみ出ようとも、注意せずにただ見守ってきたのだ。ヒロインの先生や給食のおばさん、生徒たちも、甘利田の行動に困惑することはあっても、彼にとっての生きる源である給食の時間だけは邪魔することなく、そっと見守ってきた。
子どもが大人に見守られるように、大人もまた誰かに見守られている――。『おいしい給食』は、そのことを静かに教えてくれるドラマでもある。

