「狂気的な雰囲気」が似合う俳優・長谷川博己、内在する危うい魅力とは?
最新作『二重生活』でも、マイホームに美しい妻と娘、ヒット作を連発するイケメン編集者という、絵に描いたようなエリート的なプロフィールを持つ石坂という男性を演じているが、どこか狂気的な雰囲気を漂わせる。案の定、後半、内在していた“二重”の心が噴出していく。メガホンをとった岸善幸監督も「二枚目で絵になるような雰囲気の中、ふと振り向いただけでも不思議な気配があり、狂気性も漂う」と長谷川に内在する危うい魅力を語っている。
長谷川は「自分は普通すぎてしまうから、それを何か違うところで埋めないといけないと思っていた」とクリエイターたちの評価を意外そうに受け止めていたが、演じるキャラクターが多元的で立体的な奥行をもつことは、これまでの作品をみていれば頷けるだろう。画面やスクリーンに長谷川演じる人物が映ると「何かが起こってしまうのでは……」と想像力を掻き立てられる。本人の言葉通り「普通である」ことへの反動的な表現なのか、はたまた自身が意識していない内に潜む狂気性なのか……。その答えは定かではないが、長谷川が身にまとう独特の“気配”に魅了されるクリエイターが多いのは事実だろう。