「普通の女の子の普通の暮らし」を描いた朝ドラ『ひよっこ』の大胆な試み
1日たった15分の中に、本来ストーリーと無関係な「誰かの思い」があらわれる仕草をさりげなく盛り込むことは、容易じゃないはずだ。さらに驚かされたのは、最終話に向かう、一人一人の「ハッピーエンド」の切なさ。ひよっこたちがそれぞれに「殻を破ること」は、とても嬉しい、ステキなこと。ときには、観ている側が恥ずかしくなるほどに、甘ったるい描写もあった。にもかかわらず、明るく楽しい場面と対比するかのように、そこには小さな喪失感も必ずある。
もしかしたら殻の中に入ったまま、みんなでぎゅっと集っている日々が、いちばん心地良いときかもしれない。でも、誰もが殻の中にはずっといられない。だからこそ、一人一人が殻を破り、自分の世界に旅立つ姿には、嬉しさと覚悟、切なさがつきまとう。
最終話のラストで、みね子はカメラに向けて笑顔で言う。「みんな、がんばっぺ」
手に入れた幸せがゴールではないこと、物語は、人生はこの先もずっと続いていくことを私たち視聴者も改めて感じさせられる、とっても優しく、切ない言葉だった。(文:田幸和歌子)