時代に翻弄された『ランボー』とシルヴェスター・スタローンの生きざま
●不遇の作品『ランボー3/怒りのアフガン』(1988)
映画『ランボー3/怒りのアフガン』 写真提供:AFLO
第3作は、現実の歴史に翻弄された不遇の作品である。本作でランボーは、アフガニスタンで捕虜として捕まってしまったトラウトマン大佐を救出しに向かうことになる。現実の世界では冷戦末期。映画の中でも、もはやベトナムは関係なくなり、「ランボーVSソ連」というわかりやすい図式が展開される。
冒頭から展開されるアクションの連続は、確かにシリーズ随一の激しさ。スタローンの筋肉の仕上がりも最高潮と言える。だが、前作が酷評されたせいか、ベトナムの“死神”だったランボーは、少年と交流する心優しき男として描かれ、フットボールを愛する男に成り下がってしまった。
さらに本作では、1979年からのソ連によるアフガニスタンへの軍事介入が物語の前提にあったが、映画が公開される10日前になってソ連がアフガニスタンから撤退を開始。図らずも戦争映画としてのリアリティーが損なわれてしまった。さらに不運なことに、劇中ではランボーがアフガニスタンのゲリラ兵、ムジャヒディン(イスラム戦士)らと共にソ連に立ち向かい見事勝利するのだが、現実世界ではソ連が撤退したことでアフガニスタンはその後内戦状態に突入。その結果タリバンが台頭していくことになる。そしてご存知のように、それが9.11同時多発テロへとつながっていく。エンドロールに表示される「この映画をアフガンの戦士たちに捧ぐ」というテロップが、時代と共になんとも皮肉なものになってしまった。
時代に翻弄された『ランボー』シリーズは、ここから約20年作られることはなく、スタローン自身のキャリアもどん底を迎えることになる。
●映画人スタローンのすごみを見せつけた『ランボー/最後の戦場』(2008)
映画『ランボー 最後の戦場』 写真提供:AFLO
スタローンのキャリアを蘇らせたのは、もう一つの代表シリーズ『ロッキー』であった。2006年、御年60歳となったスタローンが監督・脚本・主演を手がけた『ロッキー・ザ・ファイナル』は、ファンの胸に熱いものを取り戻させ、スタローンがまだハリウッドの第一線で活躍できることを証明してみせた。そして次なる一手を心待ちにするファンの前にスタローンが差し出したのが、20年ぶりの続編『ランボー/最後の戦場』である。これまでも脚本には参加してきたが、この第4作では初めて自ら監督も務めている。
タイの奥地で暮らしていたランボーの前に、国境なき医師団の一行が現れ、虐殺行為が続くミャンマーまでの道案内を頼まれる。一度は断るものの、彼らの熱意にほだされはなんとか送り届けるランボー。だが、一行はミャンマー軍に捕らえられてしまう。今度は傭兵による救出部隊を送り届けるため、ランボーは再びミャンマーに向かうが…。
20年の間にアクション映画は進化し続けており、ベトナム戦争も冷戦時代も過去のもの。さらに主演俳優も明らかな高齢ときている。しかしフタを開けてみれば、そんな不安は消し飛ぶ傑作が完成。劇中で繰り広げる軟弱さのカケラもない圧倒的バイオレンスは、まるでビンタされたかのような衝撃だ。
映画『ランボー 最後の戦場』 写真提供:AFLO
戦地から逃げようとする傭兵たちに「おれたちのような人間の仕事場はここだ。無駄に生きるか、何かのために死ぬか。お前が決めろ」というセリフは、全てを受け入れた純粋な戦士“ジョン・ランボー”だからこそ言えるもの。老年となってもなお、心の傷と過去を受け入れられていなかった“ベトナム帰還兵ランボー”は、母国のためでも誰かのためでもなく、“自分のために殺す”という運命を受け入れ、真の意味での“戦場の死神”として覚醒したのだ。そんな姿が、徹底したバイオレンス描写のなかに刻まれている。
そして、すべてを受け入れ戦い抜いた男が、裏切られ続けた母国へとついに帰っていくラストシーンは、ファンなら涙なしには見られない、見事なカーテンコール。 “映画人スタローン”の懐の深さを見せつけた作品となった。
●まさかの復活『ランボー ラスト・ブラッド』(2019)
映画『ランボー ラスト・ブラッド』 (C) 2019 RAMBO V PRODUCTIONS, INC.
『ランボー/最後の戦場』から10年以上が経過し、突如発表された最新作『ランボー ラスト・ブラッド』。監督は新鋭のエイドリアン・グランバーグ、脚本・主演はスタローンが務める。2人は、シリーズの総括にふさわしいのは、原点に立ち返ることだと決意。第1作『ランボー』の原題は「First Blood」であり、本作はそのアンサータイトルとも言える。1982年の第1作公開から、37年。スタローンは73歳になり、アクションスターとして輝き続けていること自体が奇跡とも言える。キャリアのアップダウンの中で闘ってきたスタローン自身とも重なるランボーの勇姿にこそ、このコロナ禍を乗り越える元気が湧くというものだろう。(文・稲生稔)
この記事の写真を見る
関連情報
あわせて読みたい
最新ニュース
-
赤楚衛二×カン・へウォンが韓国で撮影裏話語る! ドラマ『キンパとおにぎり』制作発表レポート
-
ディズニー実写版『塔の上のラプンツェル』キャストが決定!
-
グレタ・ガーウィグ監督作『ナルニア(原題)』、実写『ONE PIECE』続編など、26年Netflix海外作品ラインナップ発表
-
工藤静香、ダンス姿で美スタイル全開「素敵すぎ」「めっちゃ可愛い」「キレがスゴイ」
-
ドラマ『ストロボ・エッジ Season2』に「アオハライド」の出口夏希&櫻井海音が出演決定 最新の本予告映像も解禁に
-
舞台『岸辺のアルバム』、メインビジュアル&スポット映像が公開 小林聡美主演・山田太一原作の名作ドラマが舞台で蘇る
-
カンヌが見出した異才の衝撃――アカデミー賞ドイツ代表・100年にわたる怪奇譚『落下音』4.3公開決定
-
七瀬彩夏×伊藤美来、『おまごと』が描く“絶望とやさしさ”――心をえぐるダークファンタジーの真髄
-
『ばけばけ』“ヘブン”トミー・バストウ、衝撃の言葉にネット驚き&同情続々「不穏」「人間不信MAX」(ネタバレあり)
-
『こちら予備自衛英雄補?!』初回 “ナガレ”菊池風磨の能力に驚きの声 13年半ぶり民放連ドラレギュラー、のんにも反響「相変わらず可愛い」
-
キリアン・マーフィー主演、実話に基づくベストセラー映画化『決断するとき』3.20公開
-
明日の『ばけばけ』ついに家族の顔合わせ “ヘブン”トミー・バストウが思いがけない一言
-
timelesz・原嘉孝、ヤバ目の恋愛観を初披露しメンバーから総ツッコミ 今夜の『トークィーンズ』
-
『鬼の花嫁』8人の新キャスト発表! 伊藤健太郎は永瀬廉と『弱ペダ』以来5年ぶりの共演
クランクイン!トレンド 最新ニュース ›
おすすめチケット
おすすめフォト
おすすめ動画 ›
最新&おすすめ 配信作品 ›
注目の人物 ›
-
X
-
Instagram
