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時代に翻弄された『ランボー』とシルヴェスター・スタローンの生きざま

映画

映画『ランボー ラスト・ブラッド』(2019)メインカット
映画『ランボー ラスト・ブラッド』(2019)メインカット(C) 2019 RAMBO V PRODUCTIONS, INC.

 『ランボー』と『ロッキー』は、俳優シルヴェスター・スタローンを象徴するシリーズだ。スタローン自身が「ポジティブのロッキー、ネガティブのランボー」と表現するように、アメリカンドリームの『ロッキー』を “光”とするなら、『ランボー』はベトナム帰還兵の心の傷というアメリカの“闇”を題材にした、いわば裏のシリーズとも言える。両者とも決して順風満帆なシリーズではなかったが、時にはファンを落胆、そして熱狂させ、気づけば四半世紀を超えるシリーズとなった。そしてついに迎える最終章『ランボー ラスト・ブラッド』。今回は、紆余曲折のシリーズを振り返るとともに、作品の裏では常に製作に携わってきた“映画人”としてのスタローンの生きざまに迫ってみたい。

【写真】ついに最終章が公開! 『ランボー』37年の歴史を振り返るメモリアルフォト集

●実は誰も殺さない社会派アクション映画『ランボー』(1982)


映画『ランボー』 写真提供:AFLO

 記念すべき第1作『ランボー』が全米で公開されたのは1982年。『ロッキー』シリーズのヒットにより、すでにハリウッドスターの地位を確立していたスタローンだが、同シリーズ以外のヒットに恵まれず、なんとか新たなヒット作が欲しいとギャラを大幅に下げてまで出演したのが『ランボー』だった。

 ベトナム帰還兵のジョン・ランボーは、友人に会うため小さな田舎町を訪れるが、保安官にゴロツキ扱いされ逮捕される。強引な取り調べの中で戦争のトラウマが蘇ったランボーは、警察署を脱走。“一人だけの戦争”を始める。

 “ランボーが敵を殺しまくるアクション映画”と思われがちな本シリーズだが、実はこの1作目では、ランボーは直接的には誰も殺していない。戦争という地獄の中で殺人マシーンとして育てられた男が、社会復帰に苦しみ、そのやり場のない怒りと悲しみを激白するラストシーンは、このシリーズが社会派であることの真骨頂と言える。映画は全世界で1億2000万ドル超えの大ヒットとなったが、米国内では同年公開の『ロッキー3』の3分の1の成績にとどまり、それがこのシリーズの路線を大きく変えていく。

●最低映画のレッテルを貼られた大ヒット作『ランボー/怒りの脱出』(1985)


映画『ランボー/怒りの脱出』 写真提供:AFLO

 続く『ランボー/怒りの脱出』は、シリーズ最大のヒット作であると同時に、最低映画のレッテルを貼られた作品だ。

 ベトナムに捕虜が残されている証拠を撮影する、というCIAの任務を受けたランボーは、見事に捕虜を発見するが、CIAはいないと思っていた捕虜を実際に連れて来たランボーに困惑し、作戦を中止。ランボーは敵地に置き去りにされ、捕えられてしまう。

 社会派の側面も強かった1作目から、続編はアクション重視へと路線変更。一見すると文字通り“ランボーが敵を殺しまくる映画”にも見え、大ヒットしたことでさまざまなメディアが本作のパロディーをつくり、一層そんな印象をシリーズに与えてしまった。また、米ソ冷戦時代という背景によって、ランボーの敵はソ連になり、“強いアメリカを表現した作品”というイメージが世界中に広がってしまった。

●「俺たちが国を愛したように、国も俺たちを愛してほしい」


映画『ランボー/怒りの脱出』 写真提供:AFLO

 だが、『ランボー/怒りの脱出』は次の2点で傑作であると言える。ひとつは、裏切られ怒りが頂点に達したランボーが後半で見せる、激しい戦闘アクションが素晴らしいこと。もうひとつは、ベトナム帰還兵の苦悩という社会派の側面を踏襲した、ラストの印象的なセリフだ。

 自分を殺人マシーンとして育て上げたトラウトマン大佐から「国を憎むな」と諭されたランボーは、「とんでもない、命を捧げます」と即答した上で、心の叫びを吐露する。「俺たちが国を愛したように、国も俺たちを愛してほしい。望むのはそれだけです」と。ほんの数秒のセリフの中に、ランボーという人間の、そして『ランボー/怒りの脱出』という作品の本質が詰まっている。

 公開当時、第2作は“荒唐無稽な殺しまくるランボー”と揶揄(やゆ)された。だが、本作後半のアクションは、戦争しか知らない殺人マシーンがベトナムというホームに戻り、極限の怒りによって“死神”へと変ぼうした姿を忠実に描いているにすぎない。そして、本作におけるランボーの怒りの矛先は、決してベトナムの地で対峙(たいじ)するソ連やベトナムの兵隊ではない。あくまでCIA、母国の自分に対する仕打ちに心の底から怒っているのだ。

 素晴らしいアクションとメッセージ性を備え、前作の倍以上の興収成績をあげたが、この年のゴールデンラズベリー賞では最低作品賞を受賞。同年公開の『ロッキー4/炎の友情』とあわせて10部門中7部門受賞という、実に不名誉な作品に祭り上げられてしまった。

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