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好スタート大河『青天を衝け』と人気朝ドラ『あさが来た』の共通点

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 さらに、物語の作り方も『あさが来た』と非常に似ている。まず、つかみの強さ。本編スタートで、草むらから吉沢が飛び出し、スルーされ、追いすがり、対面を果たすのが、草なぎ剛が演じる江戸幕府最後の将軍・徳川慶喜である。そもそも草なぎが地上波連ドラに長らく登場していなかったことは、ドラマ界全体の大きな損失だと思っていたが、大河ドラマで「復帰」。多くの視聴者がいつ来るかと注目する中で、馬上から発せられた威厳ある声。すぐに一致しないほど低く落ち着いた声の主の顔が現れた瞬間、「おかえり!」と歓喜してしまった人は多いだろう。草なぎを惜しげもなく最初に出してしまうのが、実に心憎い演出だ。

 この出会いは『あさが来た』のあさと五代様の最初の出会いのような雰囲気もある。しかも、ここから渋沢と徳川慶喜それぞれの少年時代に話はさかのぼる。つまり、これは後に出会いを果たす「2人の物語」なのだ。

 また、『あさが来た』との共通点は、子どもをイキイキ描いていること。栄一の少年時代の強情っぱりの描き方は、「パチパチはん(そろばん)」に並々ならぬ関心を示しながらも「おなごに学問は必要ない」と怒られていたあさのようだし、「朝ドラ王道ヒロイン」感がある。

 そんな栄一に「責任というのは、大事なものを守る務めだ」と教えてくれるのは「とっさま」(小林薫)で、「人は生まれた時から一人じゃない。いろんなものとつながっている。だからみんながうれしいのが一番」「人の思いを考えるように」「まずは自分の胸に聞いてみること」などと教えてくれたのは「かっさま」(和久井映見)だ。

 さらに、そうした父母の教えがリアルに心に響き、その後の人生における「指針」となるきっかけを与えてくれるのが、玉木宏が演じる砲術家・高島秋帆である。そう、『あさが来た』の新次郎さんだ。

 「罪人」としてとらえられた高島は、牢の壁ごしに、栄一にこう言う。「このままではこの国は終わる。皆がそれぞれ自分の胸に聞き、動くしかないのだ」「誰かが守るしかない」。

 ここで父、母の言葉が重なってきた栄一は高らかに叫ぶ。「俺が守ってやんべ! この国を!!」。

 『あさが来た』であさに「ファーストペンギンになれ」と言ってくれた役割が、本作の栄一にとっては、新次郎さんを演じた玉木宏というわけだ。

 主人公の置かれた環境や思考回路・行動パターンという「必然」と、影響を与える人物との出会いという「偶然」を掛け合わせることで、そこに「運命」を感じさせる上手さは、大森美香脚本ならでは。『あさが来た』に渋沢栄一が出ていたわけだから、『青天を衝け』にももしかして波瑠が登場したりして?…なんて妄想もしつつ、『あさが来た』の世界観とのつながりも含めて楽しんでいきたい。(文:田幸和歌子)

<田幸和歌子>
1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムをさまざまな媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

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