モフカワだけじゃない! 実写版『ピーターラビット』は吹き替えならではの魅力にあふれている
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●吹き替え版ならではの名セリフ「それが僕のキャラの欠点だ」
映画の字幕には、1秒間に4文字、1行あたり13文字前後というルールがあり、すべてのセリフが翻訳されているわけではない。簡潔に文字で内容を伝える字幕版に対し、日本語吹き替えは元のセリフにより忠実なニュアンスを伝えることができるのが利点だ。
本作の前半、お調子者のピーターは親友のベンジャミンに無茶な悪巧みをやめるよう諭される。しかし、ピーターは「それが僕のキャラの欠点だ」と全く意に介さない。この「僕のキャラの欠点」というセリフには、本作の世界観がとてもよく表れている。失敗もするけれど、思いついたら実行せずにはいられないピーター。そんなポジティブさが欠点であり魅力なのだが、いつもやりすぎてしまうのだ。
映画『ピーターラビット』より 写真提供:AFLO
物語の後半では、いつも優しく世話を焼いてくれた親友のベンジャミンにとうとうあきれられてしまう事態に。その失敗をひとりで挽回しようと、都会行きの列車に飛び乗るピーターだったが、その時、列車を懸命に追いかけてくるベンジャミンの姿が見える。驚いたピーターが「一緒に来てくれるの?」と声をかけると、ベンジャミンがひと言、「それが僕のキャラの欠点だ」というセリフを叫ぶのだ。
それは広い心でピーターを受け入れるベンジャミンの長所を、あえて「欠点」と表現する粋な場面なのだが、字幕では「それが僕のキャラだ」という表現にとどまっており、英語のセリフでの「欠点」にあたる「flaw」は訳されていない。まさに吹き替えだからこそ実現できた、元の言葉通りのメッセージを伝える名セリフとなっている。ちなみに続編「バーナバスの誘惑」では、この「それが僕のキャラの欠点だ」に呼応するようなセリフが登場。ぜひそちらにも注目してほしい。
映画『ピーターラビット』より 写真提供:AFLO
本作は、ピーターをはじめとした個性豊かな動物たちが注目されがちだが、完璧主義なのにどうしても仕事で報われないトーマスや、画家になる夢がうまくいかないビアなど、人間のキャラクターにも共感ポイントがたくさん。誰しも何かしら欠点を持っているが、だからこそ愛おしい。人生思ったようにいかないことも多いけれど、調子に乗ったり反省したり、毎日を一生懸命に駆け抜けていくピーターたちの姿が、きっと元気をくれるはず!