大原めぐみ「弱い自分も認められる」 大抜てきから苦悩の10年、のび太に学んだ自分らしさ
2005年に、テレビアニメ『ドラえもん』でのび太役の声に抜てきされた声優の大原めぐみ。以来、17年間にわたって『ドラえもん』でのび太役を務めてきた。劇場版最新作『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ) 2021』でも、のび太らしさを存分に発揮しているが、長きにわたって国民的アニメーションの主人公を演じてきた大原にとって、のび太というキャラクターとの出会いが人生においてどのような変化をもたらしたのだろうか――。
【写真】晴れやかな表情の大原めぐみ、撮り下ろしカット
「声を聞いていると疲れる」10年悩み抜いてようやくスタートラインに
のび太と言えば「ドラえも~ん」という頼りなくも愛らしい呼びかけが印象に強いが、大原は自分が感じたままののび太を表現することで晴れてチーム『ドラえもん』の一員になった。オーディションで大原がイメージしたのび太が認められたので、作品にも自身が考えるのび太らしさを投影していったというが、壁にもぶつかった。
「やっぱりのび太くんの喜怒哀楽を表現するのは難しく、かなり悩みました。自分ではしっかりと感情を出していると思っていても、周囲からは『足りない』と言われて…。そこをどう埋めていったらいいのだろうというのは常に考えていました。いろいろな方に相談しましたが、結局は自分で体得しないとダメなんですよね」。
試行錯誤を繰り返しながら、のび太というキャラクターに向き合ってきた大原だが、結局自身で納得できるのび太像にたどり着くまでには多くの時間を要した。「声優を務めて10年ぐらい経ってようやくスタートラインに立てたような気がしました」と語ると「最初の頃は全部のセリフに力が入っていたんです。当時『あなたの声を聞いていると疲れるんです』と指示されて…。でも力の抜き方が分からない。当初は本当に悩んでいました。10年ぐらい経ってようやく、心の緩急ではないのですが抜くところが分かるようになってきたんです」と明かす。
のび太というキャラクターで、少しずつ納得した演技ができるようになったという大原。演じるうえで大切にしていることは、どれだけ共感してもらえるようなキャラクターになるか――ということ。
「のび太くんって、視聴者から見ると、時にはイライラしたりもどかしかったりでツッコミを入れたくなるキャラクターだと思うんです。でも根本はまっすぐな男の子で、憎めない。なんとか助けてあげたいなと、1番気持ちをシンクロしやすい人物。そういった特徴はブレないように、セリフに気持ちを乗せています」。
また、テレビアニメと劇場版では演じ方にも違いがあるという。「テレビアニメの場合、11分ぐらいの尺に起承転結を収めなければならないので、あまり気持ちの流れというものを作れないんです。例えば嫌なことがあっても、すぐにドラえもんに道具を出してもらって機嫌が直ったり(笑)。基本的に切り替えが早いのでテンポを大切にしています。一方、劇場版は100分ぐらいの尺のなかで気持ちの流れを作っていくので、深い部分まで意識して細かい表現を心掛けています。映像もすごくダイナミックなので、そこに負けないように…という気持ちも強いです」。