若手から信頼厚い内野聖陽 「最高のパフォーマンスを出してもらいたい」現場での優しい気遣い
昨年11月「徹底した役作りと確かな演技力で、見る者を圧倒する力強い役から繊細さのある役柄まで巧みに演じ、芸能界の発展に貢献した」という理由で紫綬褒章を受章した俳優の内野聖陽。そんな俳優としての姿勢は、製作陣はもちろん、共演者の間でも大いに称賛される。最新作『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー/最後の錬成』でも、非常に難易度が高い二役を見事に好演し、主演を務めた山田涼介も内野に対して絶大なる信頼を口にしていた。なぜ多くの共演者から内野は慕われ、頼りにされるのだろうか――その流儀に迫る。
【写真】内野聖陽、鋭い表情もかっこいい!
■グリーンバックの撮影で、芝居の原点を再認識
『鋼の錬金術師』の続編にして完結編となる二部作『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー/最後の錬成』。本作で、山田涼介演じるエドワード・エルリックの父ヴァン・ホーエンハイムと、ホムンクルスの生みの親である“お父様”の二役を演じている内野。オファー受けたときは原作を読んでいなかったため、役柄について理解するところから始まった。
「まず原作を28巻まで全部読みました。でも1回読んだだけでは分からなかったので、曽利文彦監督に役について何度も質問しました。読めば読むほど扱っているものが戦いや平和、人種の問題など非常に深く、しかも現代にビビットにハマるような内容で、すごくメッセージ性の強い漫画だなと感じたんです。さらにホーエンハイムという化け物的な存在が、人類や家族を守るという非常に人間的な部分と、お父様という得体の知れない深い暗闇を持っている存在という、相反するような役を演じられることは、とてもやりがいがあるなと感じました」。
未知の存在だった原作、役柄を一つずつ丁寧に読み解き、現場に臨んだ内野。そこに待ち受けていたのが、グリーンバックでの撮影だった。
「CGを駆使した作品だったため、ほとんどがグリーンバックでの演技。普段はセットに入れば美術があり、ロケに行けばその環境がある。いかにそういうものに助けられて演技していたんだなということを実感しました」。
一方で、芝居の原点に改めて立ち戻ることができた撮影だったという。
「僕は演劇畑から来ているのですが、演劇というのは、稽古場は何もないんですよね。そこから相手との関係性を深めていくという意味で、イメージがとても大切になってくる。そこは今回の撮影と似ている部分があり、想像力というものに集中して芝居ができるというのは面白かったです。本来演技って脚本から喚起されるイメージのなかでするものだってことを改めて感じた現場でした」。