『カメ止め』でブレイクの竹原芳子62歳 失敗も嫌なことも「後になって考えたら必要だった」
社会現象を巻き起こした映画『カメラを止めるな!』(2018)にどんぐりという芸名で出演し、一躍、個性派女優としてブレイクを果たした竹原芳子。その後も連続ドラマ出演や、2022年には自身初の著書『還暦のシンデレラガール』(サンマーク出版)を上梓するなど、精力的に活躍している。そんな彼女が『カメ止め』をフランスでリメイクした映画『キャメラを止めるな!』に、オリジナル版キャストの中で唯一出演する。同作でカンヌ国際映画祭に参加するなど、50代からまさにシンデレラストーリーを歩む竹原に話を聞くと、チャレンジ精神おう盛な素顔が垣間見えた。
【写真】写真撮影でも「『キャメ止め』、見てや!」と元気いっぱいにアピールしてくれた竹原芳子
■『カメ止め』キャストから唯一の続投も「プレッシャーよりうれしかった」
映画『キャメラを止めるな!』より(C)2021 ‐ GETAWAY FILMS ‐ LA CLASSE AMERICAINE ‐ SK GLOBAL ENTERTAINMENT ‐ FRANCE 2 CINEMA - GAGA CORPORATION
『キャメラを止めるな!』は、第84回アカデミー賞・作品賞やゴールデン・グローブ賞などを受賞した『アーティスト』のミシェル・アザナヴィシウスが監督、フランスNo.1の人気を誇るロマン・デュリスが主演を務めた作品。オリジナル版と同じ30分1カットで描くゾンビ映画を生中継という設定で、日本で大ヒットした映画のリメイクを依頼されたフランス人監督が、問題ばかりのスタッフたちと作品の完成を目指すさまが描かれる。
竹原に本作のオファーを聞いた時の率直な気持ちを聞くと、「あ〜リメイクされるんやと思いました。『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督からは『日本を背負って行ったなって感じがした』と言われましたが、プレッシャーよりもフランスに行けることがうれしかったです」とニッコリ。
撮影は昨年5月、ロックダウン中のフランスで敢行されたが、事前に監督とリモート会議をしたそうで、「『とにかく元気でパリに来てください』とおしゃってくださったので、『元気だけが取り柄です』とお伝えしました」と明かし、「フランスは観光客が全然いなくて、ロックダウンのパリを見られたことは逆に貴重でした」と当時を回顧する。
自身にとって初の海外作品で、通訳以外はフランス人という現場だが、「撮影は楽しくスムーズに進みました。うれしすぎて盛り上がっているので、つらい記憶が全くなくて(笑)。毎日喜んで現場に行ってましたね」と、満面の笑みで語る。作品については「面白いのはもちろん、愛情表現など、日本とまた違うフランスなりの味が加わっていて。オリジナル版に忠実ですけど、その後にビックリ展開がありますので、見てのお楽しみです」とはつらつとアピールする。
■失敗も嫌な出来事も「後になって考えたら必要だった」
竹原は短大卒業後、金融機関店頭営業や裁判所勤務を経て、50代になった2010年に一念発起。約30年前に断念していたNSC大阪校に入学した、という異色の経歴の持ち主だ。「人生50年。大河ドラマで織田信長が50歳で亡くなるのを見て、“第2の人生”と思ったら何でもできると思って。30年前にNSCの看板を見て迷っていたので、後悔しないようにやり残したことをやってみようと、入所しました。まさに『人生のキャメラを止めるな!』ですね」とニヤリ。
その後、ある落語大会に出場したのがきっかけで、女優に。さまざまな経験を重ねてきたこの12年を振り返ってみると「これで良かったんやと思います」と言い切る。「私はずっと自分を認められず、あれやこれやとやってもずっとあかんって思ってましたけど、ある時、平原綾香さんの『Jupiter』の『意味のないことなど起こりはしない』という歌詞に救われて。本当に意味のないことは起こらないんですよ。自分にとって失敗や嫌なことがあっても、後になって考えたらそれは必要な出来事なんです。例えばこっちに進もうと思ってあかんようになったら、『じゃあ今度はあっち』と方向転換するための出来事だと思えば納得できる。傷つくことを言われて嫌な気持ちになっても、その言葉で新たな方向性が見えることもある。だから今は、すべての過去の出来事に感謝ができます」。