草なぎ剛、出会って35年の盟友・香取慎吾は「普通の友達とは違って不思議な関係」
『ブラタモリ』(NHK)をはじめ、ナレーションにも定評がある草なぎ。今作でもフラットだが温かみのあるナレーションで、観る人をより作品に没入させてくれる。「俺、ナレーションの才能があるみたいで、昔から褒められることが多くて。若い時は顔が見えないから俺じゃなくてもいいんじゃないかと思っていたけど、年を重ねると、どんな格好でもできるから良い仕事だなぁと思ってきて(笑)」とニヤリ。
意識していることを聞くと、「よく噛むから、鼻呼吸で噛まないようにしてるだけかな。口呼吸だとリップの音を拾っちゃう時があるので、鼻で静かに呼吸して、次のセリフに呼吸を溜める感じ。『ブラタモリ』に関しては、タモリさんと歩いている感じを思い描いてはいるけど、基本ナレーションの時は感情は何も入れないし、何も考えてないね」と明言する。
少年2人の夏の冒険を描いているが、草なぎはどんな幼少期を過ごしたのか――。「めちゃくちゃアクティブな少年だったね。実家の春日部もそうだけど、母の実家の四国は自然が多くて。自転車で隣の町に行ってカブトムシを捕ったり、海に入ったり、山に行ったり、木登りしたり。泥だらけになって、怪我したり、危険な思いもいっぱいしたけど、スリリングなことを味わいながら、カマキリがイナゴ食べるのを見るなどして弱肉強食の世界を知ったりと、自然がいろいろ教えてくれた。自然の中で成長できたからこそ、心身ともに今の強い僕がいると思う」と感慨深い様子で当時を回顧する。
草なぎが幼い頃からの友人として公言しているのが、香取慎吾だ。香取とは出会って今年で35年経つが、「35年も経つんだね。家族ですら何ヵ月も会わないこともあるけど、定期的に35年必ず会ってる人って、そういないよね」と口にし、「慎吾ちゃんとは、お互い歳をとってるだけで、出会った時から何も変わってない気がするね」としみじみ。
「昔はお互いの家に泊まりに行ったりしていて。あと、仕事でハワイなど初めて行く場所に行った時のことはよく覚えてるね。どこ行くにしても一緒だったし」と当時を懐かしみ、香取との関係性を「家族であり家族でなくて、仕事のパートナーであり親友でもあって。仕事をしてるから、普通の友達とは違って本当に不思議な関係。僕らの仕事は役を演じたり、歌を歌ったりと、遊びの延長という部分もあり、その中で慎吾ちゃんとはずっと遊んできているという感覚があるから、いい遊び仲間でもあるかもしれないね。遊びが仕事になってるのは、すごく幸せなことだよね」とほほ笑む。
本作で“サバ缶”は2人の少年の思い出をつなぐアイテムになるが、香取との思い出のアイテムを尋ねると、「ライカのカメラかな。2013年頃、彼が持っていたので『いいね』と伝えたら、同じ物をプレゼントしてくれて。最近、カメラに興味を持ち出してフィルムカメラを始めたこともあって、もらった時にちょっと使ってしまっていたそれを引き出しから出してきて使ってるよ」と笑顔で打ち明けてくれた。
金沢監督が「コロナ禍の中で思う人に会えないという状況で、家族や友達っていいと思ってほしい」というメッセージを込めた本作。草なぎは「家族や友達がいいなと思う瞬間は、寝る時」と答え、「毎日眠る5分くらい前から家族や友達のことを思い出すんだけど、そうしたら、ぐっすり寝られるんだよね。今日一日楽しかったなと、すごい幸せな気持ちになって、高揚感を感じるの」と告白。
さらに周りへの感謝の思いが自分の根本になっているとも言い、「感謝の心を持つことによって、自分自身が幸せになれるんですよね。すごくせわしなく働いていたり、遊んでたりしていても、人や物に感謝をすると、僕は時間が一瞬止まったような気持ちになる。そこで自分の思考などがいろいろ整理される気がして。僕にとって、それはすごく大事な時間。40歳くらいから、特に寝る前にいろんな物に感謝してるね。自分が幸せに生きたいから、そうしてるんだと思う」と幸せそうな表情で教えてくれた。(取材・文:高山美穂 写真:高野広美)
映画『サバカン SABAKAN』は、8月19日より全国公開。