日常の「これっておかしいよね」をテーマに取り入れた――『激怒』監督・高橋ヨシキ×主演・川瀬陽太インタビュー
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――映画評論家として、これまでたくさんの映画を観てきた高橋監督ですが、参考にしたり意識した作品はあったんでしょうか?
高橋監督:意図的に何かのオマージュをやろうとか、そういうことはないんですが、撮影中にどう撮ったものか煮詰まったときには自分の中にある「映画の引き出し」を開けて何が入っているか探すしかない。で、何が入ってたっけと思って開けてみると大抵その引き出しにはサム・ライミの映画のあれこれが入っている(笑)。
川瀬:やればやるほどサム・ライミみたいになっていくんで、「どうせ(ライミが)好きなんだよ!」って冗談めかして言ってました(笑)。
高橋監督:(笑)。サム・ライミは古典的な映画にも造詣が深く、技術にも明るい監督なので「サム・ライミの引き出し」はとてもありがたいものなんです。あとその引き出しには「勇気」も入ってる。
何かのシーンを撮るときに、それがとてもうまくいっている作品のことは思い出します。こちらもそうなりたいですからね。
映画『激怒』より (C)映画『激怒』製作委員会
――難しかったことやなかなか思い通りにならなくて困ったことはありましたか?
高橋監督:今回、絵コンテはほとんど描いていないんです。理由はいろいろあるんですが、絵コンテを描いてビジュアル・イメージをがっちり固めてしまうと、臨機応変に対応できないんじゃないかと危惧したことが大きかった。「思い通りの画」というものを先に想定しておく代わりに、現場でカメラマンや照明の人たちといろいろやってみてイメージを作り上げていくようにしたことで、ずいぶん助けられました。なので、どのシーンが大変だったというよりは、スタッフ、キャストとひとつひとつクリアしていったという感じですね。キャラクターについても、川瀬さん含めて、役者さんたちがそれぞれの解釈で人物像を作って来てくれて、そこで初めて気が付くことも多かったです。
川瀬:俳優は、先ほど言った通りデキる人たちを揃えているので、動きの把握も早い。普通なら3カットになるところを1カットで撮れるように動いてくれる。時間短縮になっていると思いますし、ダイナミックな映像にもつながると思っています。なので監督がガチガチに画を決めないでいてくれてよかったです。もしガチガチだったらこんな短いスケジュールでは撮れなかったんじゃないかな。
映画『激怒』メイキング (C)映画『激怒』製作委員会
――怒りの中でも上位の「激怒」という感情を表現するにあたり、カロリーの高い演技が求められたかと思いますが、大変ではありませんでしたか?
川瀬:今回出演してくれた俳優たちは、僕を含めて“ひどい役”とか“どうしようもない役”とか何でも役を近視眼的な貴賤で考えず貪欲に演じてきた、数々の悪路を走破してきた人たちなので、その点は問題なかったですね(笑)。のびのびやれる環境だったと思います。
――最後に本作をご覧になる方へ、メッセージをお願いします。
川瀬:この映画は、おっさんが許せんやつを殴りまくる映画ならではな勧善懲悪エンタメになっています。イヤなことや窮屈なことって日々あると思うので、この『激怒』でぜひ息抜きしてください!
高橋監督:一風変わった作品になったのではないかと思います。低予算の作品ではありますが、僕の好きな“中ぐらいのちょうどいい映画”に近づけたんじゃないかと思いますので、気楽に楽しんでほしいですね。映画を観た後に周りを見渡すと、この映画に描かれているような“おかしいこと”が現実の中にもいろいろ見つかると思います。映画を観た人が、そんなことについて話すきっかけになったら嬉しいです。
(取材・文:稲生D)
映画『激怒』は公開中。