監督デビューのマイケル・B・ジョーダン、「クリード」ユニバース構想も「ヤバいと思ったら僕に連絡して止めて!」
――話を本作に戻しますが、過去のトラウマを話すべきではないといった、男性らしさの呪縛やトキシック・マスキュリニティ(有害な男性らしさ)もテーマとなっていますが、ご自身でも経験がありますか?
映画『クリード 過去の逆襲』より (C)2023 Metro‐Goldwyn‐Mayer Pictures Inc. All rights reserved. CREED is a trademark of Metro‐Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All rights reserved.
あると思う。世代的なものでもあると思うけど、父や祖父は感情を多く語らない。特に黒人のコミュニティでは、多くのトラウマが受け継がれていると思う。だけどこれは世界的に共通する問題じゃないかな。男性は自分の感情について多くを語らない。涙を見せる事ができない。感情について話したら弱い人間だと思われる。本作では、自分の感情について話さなかったらどんな事が起きるのか。妻や子ども、家族といった、愛する人、そして自分自身にどんな影響を与えるかを見せたかった。たとえ男が自分の感情を語ったとしても、弱いということじゃないし、男らしさが損なわれるわけじゃない。逆に話すことでより強くなれると思う。特にボクシングは男らしいスポーツだとされているから、それを語る場としては最適だと思う。アドニスのソフトな面を、新しい側面として見せられればと思ったんだ。
――『クリード』としては3作目で、監督まで手掛けましたが、マイケルさんにとって『クリード』という映画、キャラクターはどんな存在ですか。
今や僕のレガシーにもなったものなので、とても大切で特別なんだ。この「クリード」シリーズを観て、アドニスに憧れを持ってくれた子どもたちを目にしたとき、特にそれを感じるよ。その中には『ロッキー』を観たことがない子もいる。彼らにとっては、この「クリード」シリーズが導入になるんだ。『ロッキー』が初めて世に出た時のファンや子どもたちの気持ちに思いを馳せたりもする。約50年経った今も、ファンに愛される長寿作であることはすごいし、『クリード』は僕のバージョンの『ロッキー』でもある。だからすごく特別だ。
マイケル・B・ジョーダン
今はさらに世界観を広げるチャンスがあって、アニメや漫画、テレビドラマ、スピンオフなど、新しく物語を広げることができる場がある。ユニバースとしてこの物語を広げることを考えているけど、ありきたりなクサイことだけはやりたくない。だからインパクトを台無しにしないように、本物を追及していこうと思っている。もしヤバいなと思ったら、皆さん、僕に連絡して止めてね。約束だよ。
(取材・文:寺井多恵)
映画『クリード 過去の逆襲』は公開中。