クランクイン!

  • クラインイン!トレンド

高橋一生&飯豊まりえ、『ジョジョ』シリーズの魅力を分析 「“人間とはこういうもの”という提示を虚構の世界の中で描いている」

映画

関連 :

高橋一生

飯豊まりえ

■パリでも崩れない『岸辺露伴』スタッフのチームワーク

高橋:ちょっと先回りしてお話ししますと、今回はルーヴルで終わらない話です。あるルーツに回帰していく物語ですから、それもあるのかもしれません。僕は一昔前の日本映画とフランス映画が互いに影響しあっていた時代のことを想起しました。

こうした相互関係でいうと、アンドレイ・タルコフスキー監督がまさにそうです(『惑星ソラリス』ほか。黒澤明監督と盟友だった)。このシリーズにはタルコフスキー監督の作品が持つ不可思議な世界観を感じていて、それが今回ルーヴルで撮ることができて、日本に戻ってきて根源的な話になっていく。非常に良く作られた脚本だなと思いながら芝居をしていました。色味もある意味欧米的ではないですし、起承転結の軸がズレていて映画としてアーティーなものになっている感覚はありました。

高橋一生
――その世界観を生み出したのは、高橋さんが常々おっしゃっている「総合力」かと思います。『岸辺露伴は動かない』チームならではの特徴はどういったところにあると感じますか?

高橋:アイデアの持ち寄り方に押しつけがないことだと思います。このチームには「自分はこういうものを用意してきました!」と主張してくる人が誰一人いないんです。それこそ「用意、スタート」となってお芝居をしているなかで総合芸術的に見えてくるのですが、露伴邸では、本棚の中身や「こんなペンを用意してくれたんだ」「原稿はこの位置でデフォルトになっているのか」といった発見がたくさんあります。それはやはり総合力だと思います。

そして、積み重ねてきた時間も感じます。それぞれが『岸辺露伴』とその世界像を持ち寄った結果、依り代として全部を受けてやっていくわけですが、出演者に渡してくれるまでの総合力の高さとさりげなさが毎回とてもうれしいです。

飯豊:撮影の合間に本棚を見てみると、毎回本の種類が変わっていて、しかもそのエピソードにまつわる書籍を置いてくださっているのですごく面白いです。

――そうしたチームワークが、パリという異国の地の撮影でも崩れないのは素晴らしいですね。

高橋:もし一貴さんが「せっかく海外に来たんだし、もったいないからいっぱい撮っておこう」となったらどうしよう…なんて思っていたのですが、全くの杞憂(きゆう)に終わりました。今まで通りに作り込んで、サッと終わりました。それは、一貴さんの中で完全にビジョンが決まっているから。僕は2016年頃からご一緒していますが、海外撮影でも全く浮足立っていなくて「好き…」と思いました(笑)。日仏のスタッフ間の意見の相違もなく、潔くて気持ちのいい現場でした。

(C)2023「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」製作委員会(C)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
――本作では露伴の過去が描かれますが、どのように芝居を構築されましたか?

高橋:僕は第1期の頃のお芝居に戻して、よりリアリティーを強めた感覚があります。僕が第1期から第3期でやらせていただいたことは、そのまま荒木先生が『ダイヤモンドは砕けない』『岸辺露伴は動かない』で行われたことにも通じるところがあります。露伴は作品ごとに、人間性が全く違うくらいの乖離(かいり)を見せる人物です。ですが、1人の人間において大切なものや向き合うことが違えば、本質的なものまで変わってしまうのではないか?と感じますし、そうした人間の個性の曖昧さをこれまでは実験させていただいてきました。その上で今回は、そうしたアプローチを試しました。

飯豊:泉くんとしては、長年一緒に漫画家と担当編集というバディとして過ごしてきて、露伴先生を支えられるようになったり、少しは信頼してもらえるようになったのかな?と、今回の台本を読ませていただいたときにそう感じて、その部分は意識して撮影に臨みました。ただ、もちろん根本的な部分は変えず、今回も楽しく演じさせていただきました。

高橋:露伴にとって、泉くんはある意味一番の強敵だと思います。彼は“動かない”のに、毎回“動かす”ネタを持ってきてしまうわけですから。そして劇中のセリフにもありますが、本当に感心しているところもある。露伴の中で「この人の持ってくるものは、自分の対応の仕方によってはもろ刃の剣だけれど自分の漫画のためになるかもしれない」とは、どこかで考えているのかもしれません。そういった意味では、ある種の信頼は生まれていると感じます。

(取材・文:SYO 写真:小川遼)

 映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』は全国公開中。

2ページ(全2ページ中)

この記事の写真を見る

関連記事

あわせて読みたい


最新ニュース

  • [ADVERTISEMENT]

    Hulu | Disney+ セットプラン
  • [ADVERTISEMENT]

トップへ戻る