池田エライザにとって“映画”とは? 監督業に進んだ深い理由も明かす
池田:わたしの場合は本当に落ち着きがなくて…(笑)。求められていなくても勉強を始めていたので、勝手に準備して、オファーがなくても自分でお金を貯めて映画を作っていたと思います。なので、 その体力とか我慢強さを自分に感じるのであれば、その先は撮ってみないと分からないのではないでしょうか。
やってみて「すごく大変だな」と感じても、「この感覚は撮ってみないと味わえないよね」とプラスに考えられるパターンもある。自分の未来がどっちであってほしいかと考えたときに、後者を望むのであれば映画を撮ってみればいいと思います。今のiPhoneは4K以上で撮影できますし、アプリを使って編集もできる。フリーの音楽もたくさんありますから、いろんなやり方で挑戦できます。そうやって気軽に映画を作っていく中で「なんかちょっと自分センスあるな」って感じられる瞬間があるかもしれません。
ーー海外では役者が監督や制作陣として参加していることも多いですが、日本ではまだ珍しく、女性で演技も制作もできる方はもっと少ないと思います。池田さんはその道の先駆者だと思っているのですが、その原動力は「撮りたい」という強い気持ちだったのでしょうか?
池田:巡り合わせや、運の良さもあったのですが、女性監督が日本において正当な評価を受けているのかという少し難しい話にもつながってきます。例えば河瀬直美さんはカンヌ国際映画祭で賞を受賞していますが、それ以外で女性の監督で海外の賞をよく取っている人と考えたときに一般の人は思い浮かべにくいかと思うんです。
だからわたしが女性監督として矢面に立てば、最初は結構しんどいだろうけど、女性監督が少ないという話になったときに「池田エライザがやってるじゃん!」と話のきっかけになればいいと思いました。映画って1人でも作れますが、基本的にはみんなで作るものなので、チームで作るという多幸感を味わえて、それは悪くないことだし、わたしは楽しいなって思っています。
ーーありがとうございます。それでは最後に池田さんが今映画に期待することを教えてください。
池田:劇場に来てほしいっていうのはもちろんあるんですけど、やっぱり生活に寄り添いたいなと思っています。俳優も、映画がみんなの心の近くにあればいいなと思っている人が沢山いるので、敷居が高いものでなければいいなと。だからこそTikTokのショートフィルムが、皆さんが映画を好きになるきっかけの1つになるとうれしいです。
※河瀬直美の「瀬」は旧字体が正式表記
(取材・文:阿部桜子 写真:小川遼)