三上博史、不安も感じた40代を経て、「自分の居心地がいいことしかやっていない」現在
現在は「東京を離れて、山に住んでいるんです」という三上。「違う価値観の人たちと交流をしていて面白い。(山で暮らすことで)人間的なリズムになってきている」と笑顔で明かした三上だが、「僕も40代くらいの時は、すごく不安だったんですよ」と本音も吐露した。
「わけが分からない不安に陥った時があって、なんで不安になっているんだろうと冷静に考えたんです。そうしたら、老後のことを刷り込まれているからかもしれないと(思い至った)。僕は老後は一人だから、お金がいくら必要だとか、病気になったらと(考えがあった)。でも、それならば、のたれ死にでいいじゃないかと思ったんですよ。のたれ死にを覚悟したら、すごく楽になりました。いつ死んでも、どこで死んでもいいと思ったらお金も必要ない」。
もちろん、だからといって未練や執着がないわけではない。「突き詰めれば、『生きている意味は?』とか『僕が生まれてきた理由は?』とかどんどん出てくるけれども、でも、そうやって考えていくことで余計なものが外れてくる。窮屈でバカみたいだなと思うことは、やめちゃえって(笑)。今は、そうしたものを外していってます」。
そんな三上は、2008年から現在に至るまで毎年欠かさず、寺山の5月4日の命日に、寺山の出身地である青森県三沢市の寺山修司記念館において追悼ライブを行うなど、寺山作品に強い想いがある。改めて今回の公演について尋ねると「まだどうなるか分からないんですよ」と苦笑いしながらも、「良くも悪くもすごいものになると思います」と胸を張る。
「今回は、僕の大好きなミュージシャンたちが来てくれて、僕の大好きな衣装デザイナーも、ヘアメイクも入ってくれて、どこを向いても大事な人だらけです。その方々がどう反応して、ワークハンドしていくか。良いことしかないと思っています。ただ、“お仕事的なアプローチ”がどこにもないので、大暴走してしまうかもしれないけれども(笑)、その目撃者に皆さんはなれると思うので、そこに価値を見出していただけたら。どこか僕の部屋を覗いているような作品になると思います」。(取材・文:嶋田真己 写真:高野広美)
『三上博史 歌劇 ―私さえも、私自身がつくり出した一片の物語の主人公にすぎない―』は、2024年1月9日~14日東京・紀伊國屋ホールにて上演。前売りチケット好評につき、アーカイブ配信決定。
『三上博史 歌劇 ―私さえも、私自身がつくり出した一片の物語の主人公にすぎない―』ビジュアル