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真田広之、プロデューサーは「将軍に近いかもしれない」 還暦過ぎてたどり着いた“初体験”に喜び

海外ドラマ

■ようやく得た「プロデューサー」というタイトル

真田:ここ数年ずっと、いち俳優として言える・直せる範囲の限界を感じていました。だからこそ今回「プロデューサー」というタイトルの大きさを痛感しましたね。タイトルのあり/なしでここまで発言権が違うのだと。

虎永にとっての「将軍」というタイトルと近いかもしれません。彼は最初からその座を望んでいたわけではないけれど、将軍になって初めて平和な世の中が作れるようになったところがあります。僕もまた、プロデューサーというタイトルを得たことで最後までこだわって貫けたため、どこかオーバーラップするものを感じています。

――この20年間、真田さんは『LOST』や『ウエストワールド』『ライフ』などなど、多くの出演作で“日本代表”として活躍されてきました。

真田:現場に出る時は自分が日本人の第一印象になることが多々あります。そうするとやはり恥ずかしいことはできません。後輩が海外進出する可能性を邪魔したくもないですしね。基本は日本にいた時と同じことを行っていますが、海外に出るとより“日本人らしさ”を求められます。日本にいる時以上に日本のことを学ばないと、聞かれた時に答えられないため、トレーラーにもさまざまなジャンルの分厚い本を並べて常に準備をしています。そうしたプレッシャーはありますが、日本にいたら「誰かがやってくれるだろう」と怠けてしまうところも海外では責任を持って答えないといけないことで、本当に日々勉強になっています。

――先ほど日本で活動するスペシャリストを現場に連れてこられた、というお話がありましたが、『SHOGUN 将軍』の現場でのコミュニケーションは通訳の方を介して行われたのでしょうか。

真田:そうですね。それぞれのパートに専属の通訳を置いてコミュニケーションを取ってもらい、俳優部においては監督とのやり取り専用の通訳の方がセットに常駐する体制を取りました。

ただ、通訳の方々は言語のニュアンスはちゃんと伝えてくれるのですが、監督が何を求めているのかを具体的にどういう言葉で伝えればいいのかというのは、なかなか難しいものです。俳優としての自分の経験も含めて「こういうことを求められているからこうするといいのでは」といったようなアドバイスを、サブ通訳のような役割で常に行っていました。

俳優同士だからこそ分かることも当然ありますし、「この人にはこういう伝え方をすれば分かってくれる」というのは人それぞれ違うので、撮影が始まって1ヵ月くらいでそうした部分をつかんで、必要な際にはフォローしていました。


――クリエイティブにおける調整は無数にあったかと思いますが、真田さんの中で「特にこれは大変だった」というエピソードはございますか?

真田:たとえプロデューサーとしての権限があったとしても具体的にスタッフ、キャストにどう理解してもらうのか、どういった発注をすればモノがそろうのかなど、時間と予算の戦いが一番気をもんだところではあります。ただ、この現場には文化をリスペクトしてくれる体制が整っていました。

例えば能のシーンは、日本から撮影地のカナダ、バンクーバーまで本職の能楽師をお呼びして、物語に沿ったオリジナルの能を作っていただきました。ただ、舞台をどうしようかという話になり現地のスタッフは「能楽堂を作ろうか」と言ってくれたのですが、独立した劇場にしてしまうと逆にリアリティーがない。そこで、自身の大河ドラマなどでの経験を生かして大坂城(大阪城)の中に特設のステージを作る案を出しました。それに基づいて図面を引いてもらったら「セットのこの部分にコンクリートの柱がある」という話になり、「じゃあこれを木に見えるように覆ってご神木のようにしたらいいんじゃないか」「一つひとつの木も遠近法でだんだん小さくなる」などと図面を細かくチェックしながら作り上げていきました。

そして次は、誰がどこに座るか。「若君はここしかない。石堂和成(平岳大)はこの演目のプロデューサーだからこちら側に座らせて、そうすると落葉の方(二階堂ふみ)と目が合いやすくなる」など、台本と照らし合わせて考えていくのは大変といえばそうですが、僕の感覚としては「面白い」に尽きます。アイデアを求められることも光栄ですし、それがうまくハマった時の喜びたるや、今まで経験したことのない種類のものでした。日本の俳優がいいパフォーマンスをしてくれた時もそうですし、随所に初体験の喜びがありました。

こうした関わり方はできれば長く続けていきたいですし、今後もやりたい人がいれば引っ張り上げて世界に紹介していきたいと思っています。還暦を過ぎて、新たなミッションがスタートした感覚を抱いています。

――本作を経て、今後のものづくりに対する新たなビジョンも生まれてきましたか?

真田:そうですね。いくつか漠然としたアイデアがあります。今回これだけ事前に準備ができていてもやっぱり足りなかった部分はありますし、毎作毎作でそれを補い、反省点を生かして次のステップに進めたらと考えています。

――作品単体の見応えもそうですが、舞台裏を伺うと観賞時の味わいがより増しますね…。素晴らしいお話をありがとうございます。

真田:物語のテーマ性も重要ですが、東西の壁を乗り越えて西洋と日本のスタッフ、キャストが一丸となって教え合い、学び合い、尊敬し合って一つのものを創り上げたことそのものが、一つの現代へのメッセージになっているかもしれません。国境や目の色、宗教の違いを越えていけるというモデルケースになれたらと思いますし、こちら側としてはそうした意義を感じていました。一人ひとりのこだわりや思い入れを画面からくみ取っていただき、何か感じ取っていただけたら、今のこの時代に作った意味があったと言えると思います。

(取材・文:SYO 写真:上野留加)

 『SHOGUN 将軍』はディズニープラスの「スター」にて独占配信中(初回は2話配信、その後毎週1話ずつ配信。最終話は4月23日)。

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