リリー・フランキーが明かす、長澤まさみの“根っこ”の部分 「『面白い』と言われる方が喜ぶ」
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――お二人が『パレード』で演じた美奈子とマイケルは、物語が進むにつれてお互いの良き理解者になっていきます。撮影前に長澤さんとリリーさんで何か言葉は交わしましたか?
長澤まさみ
リリー:美奈子の感情について話しました。彼女の目線は1番不安定で、荒唐無稽なものに現実味を持たせないといけないから「大変な役だよね」と。俺らの役はもう完全に出来上がっている状態だからいいけれど、美奈子はこの世界を“知る”という役割が求められる。
長澤:本作は群像劇のためエピソードが多く、劇中劇の要素もあるぶん、時間的な制約で美奈子の立ち位置を説明するパートが少ないといいますか。
リリー:ドラマだったら8話くらいでやる情報量だもんね。
長澤:そうなんです。物語の転機となるような部分で美奈子の感情に寄り添ってくるため「慎重にやらないといけないけれど、どう作っていけばいいんだろう」とリリーさんに相談しました。
リリー・フランキー
リリー:まーちゃんは母親の役を演じることも増えてきただろうけれど、本作の“息子が見つかって会いにいく”は現実で会うのとはまた違う。会えたとて、生者と死者だからどうすることもできないわけですから。美奈子って、今までの方法論が通用しない役だと思うんです。だからこそ、完成品を見たときは「すごいな、まーちゃん」と思いました。プロットの時点で非現実的な物語が最終的に現実的に見えてきますから。『死霊の盆踊り』くらい最初から最後まで完全に向こうの話だったら楽かもしれませんが、本作はそうではない中で美奈子が現実味を作ってくれていました。
――本作は、ビジュアル面も独特ですよね。メインの舞台となる星砂遊園地のシーンの撮影は、宮城県の化女沼レジャーランドで行われました。
Netflix映画『パレード』場面写真
リリー:朝から吹きさらしの廃遊園地に、ポスターに写っているメンバーがいて、一緒にいる時間も長かったから合宿っぽさがありました。映画の中にあるようにどうでもいい話を空き時間もしていて、撮影後に1時間かけてホテルに戻ってから、またみんなで集まって近所のおでん屋でくだらない話をして。おでんを食べている時間も、このメンバーとの雰囲気を作ってくれていた気がします。
いざ撮影が始まると、共演者とコミュニケーションを取る時間は意外とないものですが、今回はこのメンバーでいる時間がほとんどだったから同じ時間にみんなが終わって「寒いからおでん食べに行く?」って。そこで映画のことも話し合えたし、いい時間でした。
長澤:わかります。久しぶりに「映画の撮影だな」と感じて、子どものころの地方ロケを思い出しました。懐かしさとともに、やっぱりこういう時間は大切だなと改めて思いました。俳優同士で「今日どうだった?」や「この先のシーンどうする?」と話せるのは良いですよね。
Netflix映画『パレード』場面写真
リリー:この映画のグループチャットがあるのですが、森七菜ちゃんから「おでん屋さんの従業員の人が辞めるらしいです」と連絡が来て、そこまで詳しくなったの!?と思いました(笑)。どうもそのおでん屋さんのインスタグラムを見たらしくて、そういうところも面白かったです。