有沙瞳、元宝塚娘役が老舗演歌系プロダクションから再出発 こだわり続けたい歌への思い
昨年宝塚歌劇団を卒業した、元星組娘役の有沙瞳。退団後、田川寿美、水森かおりら大物演歌歌手をはじめ、中村玉緒、グッチ裕三らそうそうたる顔ぶれが所属する老舗・長良プロダクションで活動をスタートさせた。7月には念願の初ディナーショーの開催を控える有沙に、宝塚時代の思い出や卒業後の活動、さらには現在の事務所に籍を置くことに決めた理由などを聞いた。
【写真】キュートな笑顔を見せる有沙瞳、インタビュー撮り下ろしショット
◆毎日学びや充実があった宝塚での11年
――退団から10ヵ月ほど経ちます。宝塚での11年はどんな時間でしたか?
有沙:そんなに長くいたという感覚がないんです。でも、毎日いろいろな学びがあり充実した11年でした。それはスタッフさんや組子といった、人と関わることから生まれたものだったんだなと、卒業して1人になり、会おうと思わないと人に会わない日々の中で改めて思います。ずっと仕事の同志としてそばにいてくれる仲間が自分を高めてくれていたんだなと実感しています。
――個人的に、初めて「有沙瞳、恐ろしい子!」と思ったのが、2014年の『伯爵令嬢』での敵役・アンナでした。あれは、研3くらいだったんですよね?
有沙:そうでした(笑)。生田大和先生が演出の作品で、はじめは、自分が思っていた娘役ではできない役といいますか、ドスが効いていて(笑)、本当に苦労しました。お稽古場で綺麗な格好をしていると全然できなくて、裸足や汚い格好でその感覚をわからせようと思ったり…。あの役に挑戦できたからこそ、後に見えるものもありましたし、逆に、あの印象が強すぎて次に違う役をしても、お客様の中にあるイメージを裏切ることに苦労もしました。
――『銀二貫』のような作品もありますが、はっきりしたキャラクターを演じられることが多かったですね。
有沙:やっぱり見に来てくださる方に、どんなメッセージでもいいんですけど、作品や自分の役を通して何かを感じて帰っていただけたらという思いがあります。演じる役も、物語の中で周りの人からの影響で苦しんだり元気になったり成長や進化をしているので、2時間半の中でその役が生きている役作りをしたいと思っていました。そういう姿をお見せすることで、どんな生き方をしていても、最後は立ち向かって生きていくさまに、お客様は共感してくださるのかなと。皆さんに「見てよかった」、「明日からも頑張ろう」と思っていただけたら、見に来ていただいた価値があるといいますか、私が演じる意味があるのかなってコロナ禍以降考えるようになりました。
――なるほど。確かに有沙さんのお芝居はどんなキャラクターを演じられても、存在感のあるものが多かったです。
有沙:11年の宝塚人生では何回か卒業を考えた時もありました。私は変化や刺激が欲しい人なので(笑)、ずっと雪組にいたらこんなに長くは続けていなかったと思います。組替えは、同じ職業だけれどもこんなにも世界が違うのかって思うくらい、雪と星では全然違いました。「雪の人だったらこういうお芝居をするのに、星の人はこういうお芝居をするんだ!」とか、同じ日本物であっても提示の仕方が違ったり、すごく面白かったです。そう思った時に、組替えをして星組で、有沙瞳として、どう娘役として生きていたいんだろうというのを、『ドクトル・ジバゴ』以降ですかね、考えるようになって…。その時に、七変化といいますか、「今度はこんな役をするの!?」と思われるような、カメレオンみたいな娘役、役者でいたいって思いました。