伊藤万理華、初共演・中川大志に「かっこよすぎて動揺」 お互いが惹かれる役どころとは
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――チャチャと樂のキャラクター自体も、物語が進むにつれて、印象がどんどん変化していきます。その幅も伊藤さん、中川さんが演じているからこそだと感じました。おふたりは、それぞれが演じたチャチャ、樂の魅力をどう感じましたか?
伊藤:中川さんの樂は、自分が想像していた樂よりかっこよすぎて、ちょっと本当に動揺しちゃったんです。自分の中では、もっと樂はヘナヘナしているというか、弱弱しさが漂っているのかなと思いこんでいたので。それが、「あれ、全然違うんだが」と。中川さんの作り上げてきた樂は、佇まいからして、チャチャが恋をするのに完璧な野良犬だった。チャチャが純粋に、「見つけた」「すてきだな」と思える、ちょっと陰のあるところにも惹かれる樂でした。
『チャチャ』場面写真 (C)2024「チャチャ」製作委員会
――たしかに、陰もありましたね。
伊藤:最初から、何かの意思を持ちながら、どこか孤独な陰があって。それをずっと中川さん自身が現場で作られていて、すごくすてきでした。ほぼ順撮りだったのですが、後半になるにつれて、どんどんチャチャが引き込まれていく過程も、すごく素直に、チャチャとして引きずり込まれました。中川さんは「淡々と」やっていたので、それも罪だなと思いました(笑)。あと、そうした気持ちがピークに達したあとに、最後の森のシークエンスがあって、そのとき樂の背中を見て、初めて“母性”が湧いたんです。最初は陰とかオーラとか、ミステリアスなところにも惹かれていたけれど、もっと小さくて孤独だった。樂を「すごく人間だった」と感じました。
――そうした伊藤さんの心の動きも、本編からとても伝わりました。中川さんも、聞きながら嬉しそうですね。
中川:目指していた樂だったので、嬉しいです。今回お話をいただいた時点で、チャチャが伊藤さんだということも伺っていました。独自のエネルギーというか、世界観みたいなものを持たれている方だという印象があったので、チャチャは伊藤さんのために用意された役だな、ぴったりだなと、最初からイメージしていました。
――本当ですね。
中川:ただ、酒井監督もコメントしていましたが、チャチャは本当にバランスの難しい役で、一歩間違えただけで見え方が全然変わってしまう、とても繊細に作っていく必要のある役。お会いする前は、伊藤さんもご自身で創作活動をされていますし、世界観や表現したいことがはっきりしている方だと思っていました。それこそチャチャと同じように、とてもアーティスティックなイメージがあったのですが、でも実は現場でチャチャに行きつくまでに、すごく悩んでいらしたそうなんです。
――そうなんですね。
中川:そうした伊藤さんの迷う瞬間、チャチャと向き合っている時間があったからこそ、人間味のあるチャチャのキャラクターになったのかなと思いますし、見ている観客の方たちも共感できて、好きになれて、信じていけるのだろうと感じました。これがあまりに天才的な感覚の人だと距離を感じてしまう。でもチャチャも伊藤さんも、いろんな情報を受け取って、自分の中で悩んでいる。そうした姿に、傍から見ていてとても惹かれました。
伊藤万理華
伊藤:自分は創作活動もしているからか、近寄りがたいと距離を置かれることがあります。数週間しかなかった撮影で、中川さんはそこまで見ていてくださったのだなと。実は、現場で悩んで時間をちょっと止めてしまったりしたことがあって、申し訳ないなという思いが強かったんです。でもその悩んだ時間をチャチャとして見てくださったと。今回、本当に自分を見つめ直せば見つめ直すほど、チャチャでした。そのことに、みなさんに助けられて、監督に気づかせていただいた現場だったのですが、こうして言葉もいただけて、すごく救いになりました。