クランクイン!

  • クラインイン!トレンド

山田裕貴、満たされない“ジョーカー”に共感 「ずっと乾いた状態」

映画

■満たされないジョーカーに共感

山田:あくまで一部の声ですが、声の出演をさせていただいた作品の方が評価していただくこともあって「もう顔が出ない方がいいのかな」と半分冗談、半分本気で思うことはあります。ですが、やっぱり楽しくはあります。僕はアニメーションが大好きなので声優さんへの憧れもありますし、ジョーカー役はデビュー作の『海賊戦隊ゴーカイジャー』からご一緒させていただいている平田広明さんでしたから。自分が普段活動しているフィールドとは違えど、成長している部分を見せられたらなという思いはありました。ちなみに平田さんからは「責任重大だからな」とDMをいただき、そんなプレッシャーのかけ方がありますか!?と思いました。

――『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』は、周囲に求められるジョーカーとしての虚像と、アーサーという本人の乖離(かいり)がひとつのテーマかと思います。山田さんが興味を抱いたポイントはございますか?

山田:妄想の中と思しきシーンが登場しつつ、現実のように見えているシーンももしかしたらにせ物かもしれず、本当ってどこにあるの?と思いました。僕たちが生きている世の中も、見えているものだけで人は動きますよね。でもその「見えている」部分は誰かがコントロールしていて、「それって真実なの?」と思うことも多くあります。結局、本人にしか本当のところは分からないものだと思います。

そんななかで、アーサーはものすごく悲しい人物だと僕は捉えています。誰からも愛されず、誰かに信じられるということもなく、つらい心を誰も見てくれなかったからこそ彼はジョーカーになるしかなかったのではないでしょうか。メイクをして、仮面をかぶって――僕には、ジョーカーはアーサーの“盾”のように映りました。

僕が『ジョーカー』を見た時に今までとの一番の違いだと感じたのは、「笑い」の部分です。これまでも笑いたい時に笑うジョーカーはいましたが、泣きたい時や怒りたい時など感情を出したい時に、発作として笑いになってしまうジョーカーは恐らく初めてではないでしょうか。「全てが仮面である」というメッセージが伝わってきて、非常に示唆的だなと感じました。

例えば僕たち俳優がテレビの中で楽しく笑っていたとしても、実はその日ものすごく悲しいことが起こっていたかもしれないし、裏側や真実は分かりませんよね。それなのに「目に見えているものが全て」としてしまう世の中に対して僕も疑問を抱いているので、愛されてあがめられるジョーカーになりたいと思う気持ちは十分理解できてしまいました。

スタッフさんと打ち合わせをするなかで「この映画自体がピエロメイクで、見ている人たちすらだまそうとしているんじゃないか。でもそれ自体も間違っていて、答えなんてどこにもないかもしれない」といったような話をしました。見る人によって感想が全く違っていて、僕が今お話ししていることも正しくないのかもしれないので、ぜひご自身の目で確かめてみてほしいです。

――「本当のところは本人にしか分からない」という点でいうと、1年ほど前、ある媒体で山田さんにお話をうかがった際に「自分の芝居が面白くないんじゃないかと思ってしまう」と話されていたのが強く印象に残っています。今現在はいかがでしょう?

山田:今もなかなか面白いと思えていません。もっと作れるのかな、作らない方がいいのかなと日々悩み続けていますし、一つひとつのパフォーマンスに納得いっているかといえばそうでもありません。

海外の俳優さんのように作品の打ち合わせ段階から参加し、何年もかけて準備を行うというのは中々難しくて。1つの作品が終わったら、すぐ次の作品に入ったり、作品が重なることもありました。毎日現場で必死にその役を生きるしかない状態が長らく続いていたので、その限界が見えたのだと受け止めています。ただ、少年ジャンプ魂を捨てていない自分としては「自分で限界を決めるなよ」と思ったりもしますし、冷静にこの状態を見ている自分もいます。

ただこのままだと大きな渦を起こせる感覚はなくて、ずっと乾いた状態です。「何が足りないのか」と日々探し続けています。だからこそ、満たされないジョーカーに共感するのだと思います。何か突破口が見つかるように、もう少しあがいてみたいと思っています。

(取材・文:SYO 写真:高野広美)

 映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』(通称『ジョーカー2』)は、10月11日より全国公開。

2ページ(全2ページ中)

この記事の写真を見る

関連記事

あわせて読みたい


最新ニュース

  • [ADVERTISEMENT]

    Hulu | Disney+ セットプラン
  • [ADVERTISEMENT]

トップへ戻る