水樹奈々、25年の感謝と進化——ニューアルバム『CONTEMPORARY EMOTION』が描く新たなステージ
――ここからは楽曲ベースのお話もお伺いできればと思います。水樹さんの中で「ターニングポイントになった」と感じる曲は?
水樹:かなり初期まで遡りますが、2002年にリリースした5枚目のシングル「POWER GATE」が、私にとって大きな転機になった曲です。この曲をレコーディングしたとき、「私は応援ソングを歌っていきたいんだ」と、はっきり自覚したんですよね。
それまでは、とにかく歌えることが嬉しくて、プロデューサーの方々が選んでくださった楽曲を歌えるだけで幸せだったんです。でも、ライブを重ねるうちに「私ってファンのみなさんに何を伝えたいんだろう?」と考えるようになって。ただ楽しく歌うだけではなく、自分がちゃんと発信したいメッセージを持たないとダメなんじゃないか、と感じるようになり、そんなときに出会ったのが「POWER GATE」でした。
この曲をきっかけに、楽曲制作にも積極的に関わるようになり、「どんなコンセプトで曲を作りたいか?」といったことを1から考えるようになりましたし、作詞にも挑戦するようになっていきました。今でもライブで歌い続けている曲ですが、本当に「POWER GATE」との出会いが、水樹奈々というアーティストとしての方向性を決めたターニングポイントだったなと感じています。
――運命の出会いだったんですね。また、アーティストとしての“進化”を実感した楽曲は?
水樹:進化の始まりは、やはり2005年にリリースした「ETERNAL BLAZE」ですね。それまでの楽曲は、バンド演奏をメインにしたシンプルな構成のものが多かったのですが、この曲でストリングスを取り入れた、シンフォニックロックという新しいスタイルに挑戦しました。今では“水樹奈々らしい”楽曲の王道になっていますが、そのキッカケとなったのが「ETERNAL BLAZE」だったんです。
この曲は転調やキメが多く、かなりトリッキーな動きがある楽曲なんです。以前、武田真治さんがライブでゲストとしてサックスを吹いてくださったことがあるのですが、「バンドメンバーに“転調手当”や“キメ手当”を出した方がいいんじゃない?」とおっしゃっていて(笑)。歌う側としても、ものすごく鍛えられました。
でも、「この曲をしっかり歌いこなせたら、絶対にかっこいい!」という気持ちで必死に挑みましたし、何より作品(テレビアニメ『魔法少女リリカルなのはA's』)との親和性が素晴らしくて、「絶対にこの曲を歌いたい!」という強い想いを持って臨んだ1曲でした。
――そうしたこれまでの挑戦が、今の水樹さんの表現につながっているんですね。
水樹:そうですね。今回のアルバムに収録されている楽曲も、デビュー初期の私では絶対に歌いこなせないと思います。音域もどんどん広がっていますし、テンポも速い、そして構成が特殊。その中でさまざまな表現を組み込んでいくのは本当に大変で……。でも、そうなってしまうのは私のせいなんです(笑)。
作家さんたちは、ちゃんと歌いやすいように考えて曲を作ってくださるのですが、「これまでに聴いたことのないインパクトのある曲にしたい!」とか「もっとドラマチックでパワフルにしたい!」と思ってしまって。
「歌いやすさも考えて、こういう構成にしたんですけど……」と作家さんが調整してくださっても、「いや、もっと攻めちゃって大丈夫です!」なんて、自分でどんどんハードモードにしてしまうんです(笑)。
でも挑戦し続けるからこそ、新しい表現が生まれる。だからこそ、今回のアルバムも今までにない化学反応が詰まった1枚になったと思います。
――ハードモードをクリアしたときの達成感は格別ですからね(笑)。
水樹:そうなんです! もう解放感というか、達成感といったらすごいですよね。だからこそ、自ら険しい道を選んで、ここまで来ているわけですが……(笑)。でも、その分成長させてもらえているなと実感します。
――ファンとしても新しい驚きがあったり、「また水樹さんが進化してる!」と感じられる喜びがあります。
水樹:そう感じていただけたら本当に嬉しいです。やっぱりそういう瞬間に、自分自身もグッとくるというか、「来た!」って熱くなるんですよね。まさにドーパミンが一気に放出されるような、エモーショナルな高まりを感じることができて。だからこそ、挑戦し続けることをやめられないのかもしれません。
――今後新たに挑戦してみたいことはありますか?
水樹:実は今、新たな挑戦に取り組んでいる最中で、それが春頃には発表できる予定です。25周年という節目だからこそ踏み出せた挑戦でもあるので、ぜひ楽しみにしていてほしいです。
また、挑戦というわけではありませんが、今回のアルバムリリースにあたり、久しぶりにリリースイベントを開催することになりました。原点回帰ということで、アニメイトさんやゲーマーズさんにお邪魔してトークショーをさせていただきます。制作秘話などを近い距離で語り合う場は、これまでなかなか持てなかったので、すごく楽しみにしています。
そして、すでに発表されていますが、12月6日からツアーも開催します。ちょっと先になりますが、デビュー記念日に合わせて初日を設定しました。今回は、TOYOTA ARENA TOKYOやGLION ARENA KOBEなど、まだオープンしていない新しい会場での公演も予定しているので、どんな空間になるのかワクワクしています。
さらに、まだ確定ではないですが、そろそろ海外ツアーも再開したいと思っていて、現在企画を進めているところです。今年はファンのみなさんと直接会える機会がたくさんあると思うので、今からすごく楽しみです!