白石加代子、舞台に立つことは“職業”「舞台の上でこそ息ができる感覚になってきている」
泉鏡花が明治32年に発表した長編小説『黒百合』が、初めて舞台化される。富山・立山連峰に伝わる黒百合伝説を背景に、人々の欲望が交錯する群像劇。脚本を『ちりとてちん』『カムカムエヴリバディ』などを手掛けた藤本有紀、演出を杉原邦生が手がける注目作で、唯一無二の存在感を放つ白石加代子が「荒物屋の婆さん」を演じる。
【写真】白石加代子、はにかんだような笑顔がかわいい! インタビュー撮りおろしショット
◆泉鏡花作品は不気味で恐ろしいだけじゃなく、最終的には美しい
『黒百合』への出演は、即断即決だった。
「原作が泉鏡花であるということと、杉原邦生さんが演出なさるということで、お話をいただいてすぐにぜひ参加したいってお願いしたんです」。
2022年の蜷川幸雄追悼公演『パンドラの鐘』で杉原と初めて仕事をし、その手腕に惹かれて出演を快諾したものの、本作の脚本を読んで驚いた。
「これが果たして、舞台上にどのように立ち上がるのだろうかと想像ができませんでした。でも、特にト書きがすごく美しくて、それでいて恐ろしくて。こんな脚本があるんだって」。
舞台『黒百合』公演ビジュアル
明治後期の越中・立山を舞台に、幻の花“黒百合”をめぐって人々の運命が絡み合う物語。『百物語』シリーズで泉鏡花の作品は取り上げてきたが、『黒百合』は読んだことがなかったと話す。
「泉鏡花の作品は、『高野聖』とか、ありえないような世界を描いていらっしゃることと、異形のものがわんさか出てくるのよね。それがね、不気味で恐ろしいだけじゃないの。そういうものを提示しながら、ひっくり返してくださるというか。言葉を素直に読んでも、それだけじゃ成立しない。役者にとってはとても難しいところもあるけれど、最終的には美しいんですよね」。
“黒百合”という花が何を表しているのか、何度読んでもわからなかったと言う。それでも、作品世界に引き込まれた。
「読んでいて、いろんな幻想の中に入っていって、いろいろ巡り合っていって、今までにあまり見たことのないような世界へ連れて行ってくれるような印象があります」。
本作で白石が演じるのは「荒物屋の婆さん」。若い夫婦が暮らす侘び住まいの隣家の老女だ。
「そこいら辺にいそうなおばあさんですよ。本当にね。だけども、読んでいて普通のおばあちゃんにはしたくないなと思う役なんです。例えば、隣に住んでいる夫婦のうら寂しさが身に染みて、何とかしてあげたいって思ったり、時として予言めいたことを言ったりするようなおばあちゃんです。隣の若夫婦とはちょっと不思議な関係ですね」。
何気ない日常の中で存在感を漂わせる役柄。白石の真骨頂と言えるかもしれない。

