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神谷浩史、『劇場版モノノ怪』完結に万感 “仮面ライダー2号”に重ねた新たな薬売り像

アニメ

■「世界中を探しても、こんな映像はない」神谷浩史が語る『劇場版モノノ怪』の圧倒的エンターテインメント

――先ほど薬売りに対する印象や表現は変わらなかったとお話しいただきましたが、アフレコの中で、共演者との掛け合いによって変化した部分はありましたか?

神谷:坂下役の細見大輔さんとは三作品を通してずっとアフレコで一緒だったのですが、それ以外のキャストの方々は、各章ごとに一緒だったり、そうでなかったりしたんですよね。ただ、そもそも薬売りが向き合っているのって、基本的には“モノノ怪”なんです。なので、人間同士の掛け合いの中で何かを受け取って変化していくという感覚は、正直そこまで大きくなかった気がしています。

むしろ彼は、モノノ怪を斬るために必要な情報を引き出すために動いている存在なので。その過程で見得を切ったり、あえて芝居がかった振る舞いをしたりするんですけど、あれも彼なりの“演出”なんだと思うんですよね。

なので、たとえ収録を一緒にしていたとしても、そこに対して大きくブレる感覚はなかったですし、最初に受け取った“薬売り像”が自分の中でかなり明確にあったので、掛け合いの中から新しい何かを得よう、という意識ではあまりありませんでした。そして、それはおそらく薬売りというキャラクター自体の特性なんじゃないかなと思っています。

『劇場版モノノ怪 第三章 蛇神』場面写真(C)ツインエンジン
――『劇場版モノノ怪』ならではの映像表現も、間違いなく見どころになっています。映像に対する神谷さんの印象もお聞きできますか?

神谷:これはもう一作目からずっと言っていることなんですけど、『劇場版モノノ怪』はある意味“トリップムービー”みたいな側面があると思うんです。あの情報量と色彩の洪水に90分間ずっと身を委ねる感覚って、なかなか他では味わえないんですよね。世界中を探しても、こんな映像はなかなかないと思います。

もちろん、映像表現の一部として、派手な色彩や演出を使っている作品はたくさんあります。でも『劇場版モノノ怪』の場合は、それが“部分的な効果”じゃなくて、作品全体を覆っているんですよね。その圧倒的なビジュアルの中で、ちゃんと物語を紡いでいく。そこがやっぱり、他の作品とは決定的に違うところだと思います。

最初『唐傘』の特報映像が公開された時、90秒くらいの映像を観て「すごいものが来たな」と思ったんです。でも、まさかあのクオリティの映像が90分間ずっと失速せずに続くとは思わなかった。それを実際にやり切っているので「とんでもないものを作ったな」という感覚がありますね。

だからこそ、台本も“こんなこと”(とてつもなく分厚い台本2冊分)になっていますし(笑)。それだけの熱量と情報量を、映像として最後まで成立させているのは、本当にすごいことだと思います。

――実際に観て驚きました。劇場アニメーションの台本は、どれもこのような分厚さになるのでしょうか?

神谷:いや、これも『劇場版モノノ怪』ならではですね。おそらく実写作品のように、セリフだけを書き起こした台本だったら、普通に1冊に収まると思うんですよ。ただ『劇場版モノノ怪』の台本は、とにかくト書きとカット割りの情報量がすごいんです。セリフ量だけで言えばそこまで多くないのですが、その分、映像や演出に関する情報がものすごく細かく書き込まれているんです。

他のアニメ作品でもここまでト書きに情報が詰め込まれている台本は、なかなか見ないですね。もしかしたら、僕の中ではこれが“最大級”かもしれないです。


――その圧倒的な映像に負けない、キャスト陣のお芝居に圧倒されました。神谷さんが特に注目してほしいと思っているポイントはどこでしょうか。

神谷:『劇場版モノノ怪』は“モノノ怪”を通して“人間”を描く作品なので、「なぜその人がモノノ怪に関わることになったのか」や「どうしてそういう感情を生み出してしまったのか」など、そういう“人間側”に一番スポットが当たっている作品だと思います。

だから、薬売りが出ていないシーンもすごく重要で。大奥というシステムの中で、人々がどう生きているのか、そのシステムをどう維持しようとしているのか、あるいはその中で自分がどういう立場にいたいのか。そういう人間たちの日々が、すごく大事に描かれています。

一作目で言えば、黒沢ともよさん演じるアサや、悠木碧さん演じるカメのような若い女性に焦点を当てて。二作目では堀内賢雄さん演じる老中大友や、堀川りょうさん演じる藤巻といった男性陣がいて。そして三作目では、榊原良子さん(水光院役)や平野文さん(常磐井役)をはじめとした、女性陣のやり取りが本当にすごいんです。

特に今回は、ベテランの方々同士の掛け合いが、本当に恐怖を感じるくらい緊張感がありました。観ていて「なんて怖いんだ……」と思うくらい(笑)、その空気感がリアルでした。あれだけの緊張感のあるシーンを成立させられるのは、本当に皆さんのお芝居の力だと思いますし、そこはぜひ注目していただきたいポイントですね。

――そして、テレビシリーズの「離の薬売り」が、今作に“助っ人”として登場しました。そのシーンの印象も伺えますか?

神谷:『モノノ怪』というタイトルである以上、テレビシリーズとの関連性は皆さん当然気になるところだと思うんです。「どういう形で繋がっているんだろう」って。その答えのひとつが、今回の劇場版でしっかり描かれていると感じます。なので、テレビシリーズからずっと追いかけてくださっていた方には「追いかけ続けてよかった」と思ってもらえるんじゃないかなと。逆に「劇場版はまあいいかな」と離れてしまっていた方には、「そんなことになってたの!? ちゃんと観ておけばよかった」と思ってもらえるような内容になっていると思います。

今回は、本当に“すべての『モノノ怪』ファン”に向けた作品になっているんですよ。もともと存在していた“64人の薬売り”という設定も今回しっかり物語に活かされていますし、新しい物語を描きながら、同時にテレビシリーズとのリンクも成立させている。その両方を、この三部作でちゃんとお見せできているんじゃないかなと。

だからこそ、一度でも『モノノ怪』という作品に触れて「面白いな」と感じてくれた方には、きっと納得してもらえる。そんなエンターテインメント作品になっているはずだと、僕は思っています。


(取材・文:米田果織 写真:吉野庫之介)

 『劇場版モノノ怪 第三章 蛇神』は、全国公開中。

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『劇場版モノノ怪 第三章 蛇神』特別予告 -閃の巻-

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