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吉田恵輔監督、一ノ瀬ワタルの芝居に感じた“想定外”の深み「ずっといい映画になった」

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■常に「あと何分残っているか」と計算していた

──吉田組の撮影で印象に残ったことはなんですか?

一ノ瀬:驚いたのは撮影の早さでした。普通はアクションシーンの撮影は延長することがほとんどなのに、『四月の余白』では巻いたんですよ。吉田監督のアクションの振付は的確で無駄がなかったです。

吉田:実は、18歳以下の子役は夜10時までしか撮影できない労働時間の制限があります。撮影地の蒲郡は3、4月になると午後7時頃まで日が残るから、夜シーンの撮影ができるのは実質、3時間くらい。常に「あと何分残ってるから、今日はあと何カット撮れる」と時間を意識して、海斗や暴走族たちが西をどうやって襲って、西がまとめて反撃するかを即興に近い感じで振り付けていました。「このカットでパンチしてこのあと蹴ってとかあるんだけど、もう時間がないから流れでバンバンパーンと殴って蹴っちゃえ」って。

吉田恵輔監督&一ノ瀬ワタル
一ノ瀬:そういう事情があったとは気づかなかったですが、アクションの撮影は楽しかったです。海斗はずる賢くて武器を使わないと戦えない設定ですが、海斗役の隼人は少林寺拳法の有段者だそうですね。

吉田:隼人は殴られたフリとか受身がうまいし、覚えも早かったです。以前『BLUE/ブルー』の撮影で本職のボクサーに殺陣指導をしたら、パンチが来ると本能的に避けてしまい、苦労した経験があります。プロの格闘家は受身が苦手なんですね。隼人には俳優としてのセンスを感じました。

■変わりたいと思ったらいつでも変われる

──まもなく公開となりますが、改めて完成作をご覧になって感じることはなんでしょうか。


吉田:脚本段階では、西の設定は『その男、凶暴につき』の北野武さんのように「細くて弱そうだけどキレたら危ない中年男性」でしたが、一ノ瀬さんの芝居やにじみ出る人間性によって西に深みが増し、愛すべき人物へと肉付けされていました。『四月の余白』は非行や更生、教育への問題提起を含んでいるので、少しでもバランスを崩すと暗くて、暴力を肯定する後味の悪い映画と捉えられる心配がありました。そこを、一ノ瀬さんが計算して人当たりの良い熱心な西を演じてくれたおかげで、ちょうどいいところに落とし込めました。「自分が考えるより、ずっといい映画を作っていたんだ」と、今改めて気づかされています。

一ノ瀬:ありがとうございます。変わりたいと思ったなら人は20代でも30代でも、もっと大人になった人でも、少しの勇気を出せば変われる、そう自分は信じています。自分を変えたいと思っている人はもちろんですが、自分も周囲に手を差し伸べられるのではないかと、本作が気づきの一歩になればいいなと思っています。

吉田:一ノ瀬さんがちゃんとまとめてくれました(笑)。『四月の余白』は令和の時代にあまり見かけないタイプの邦画だと思います。だからこそ、逆に令和に見る必要がある映画なのではないでしょうか。少しでも興味を持っていただけたなら、ぜひご覧ください。

(取材・文:落合有紀 写真:You Ishii)

 映画『四月の余白』は、6月26日より全国公開。

※吉田恵輔監督の「吉」は「土に口」が正式表記。

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