中村蒼、“俳優として”高良健吾から「いろいろ刺激を受けています」

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ネットカフェ難民、ファーストフード難民など、ここ数年で新たに誕生した言葉たちがある。ヨコ文字が入ると、問題意識が薄れそうだが、これらの言葉はいまの日本に、格差社会が広がっていることを如実に物語っている。『半落ち』『ツレがうつになりまして』の佐々部清監督が手掛けた『東京難民』では、普通の大学生があっという間に転落し、底なし沼でもがく様が、他人事とは思えぬリアルさを伴って描かれる。主人公の修を演じた中村蒼に単独インタビューした。
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どこにでもいる大学生だった修は、父の失踪をきっかけに授業料の未払いから大学を除籍。アパートを追い出され、ネットカフェ難民に。やがて新薬開発のための治験バイトやホストを経験し、果てはホームレスにまで落ちてく。その一連の波が、たった半年の間に起きていく。
「こういった社会問題をテーマにした作品に主演させていただくのは初めてでした。挑戦のしがいがあると、やってみたい気持ちは強かったです」とクランクイン前の気持ちを振り返る中村。ただ最初の頃は修を好きになれなかったとも。
「なんでも人任せだったり、恵まれた環境を当然のように考えていて、ちょっと嫌なヤツだなって思うこともあったんです。でも実際に演じてみたら、普通の青年なんだって思いました。自分も学生の頃は、いろんなことを当たり前に感じていたし」と逆に身近な青年だと感じるようになったとか。
「それに修は落ちていく状況の中で、出会う人たちとちゃんと向き合うようになっていくんです。今までは人のせいにしていたのに、自分の未熟さに気づいて、逆に心は満たされていったんだと思う」。
とはいえ修が半年間で体験する出来事は、過酷のひと言。芝居とはいえ、1本の映画でこれほどの経験をするのは中村も初めてだったはずだが、それも役者冥利と笑顔を見せる。「楽しいですよ。こうやっていろんなことをできるのは、俳優という仕事だからこそですから」。だが、それぞれの仕事に対する大変さを痛感したのも事実だ。「ホストも土木作業員も、治験のバイトも、楽なものなんてひとつもないんだと感じました」。