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品川ヒロシ「洋画の空気を持った作品を作りたい」、映画監督業は「最高のオモチャ箱」

映画

 自身の作風を「俗っぽい」と評する一方で、ジャンル映画の典型を自らの倫理感で壊そうとする姿勢が品川監督にはある。今回の銀行強盗たちの末路の描き方にもそれは表れている。「銀行強盗の映画は好きだけれど、強盗たちがいい奴という描かれ方をするのが嫌。死ぬにしても、逃げるにしても、どんなにクサイセリフを喋っても『いや、銀行強盗でしょ? 悪いことをしているだけじゃん』と思ってしまう。だから今回のラストは僕なりのアンチテーゼでもある」とその理由を説明。さらに「僕の映画は『ドロップ』の時から、まわり回って元のスタート地点に戻るという流れが多いですね。映画だけれど、現実の日常の一つとして物語を捉えているところが自分にはあるのかも」と自らの映画思想を反映させてもいる。

 品川組という特定のチームを作らないのも特徴で、3作品ともカメラマンが違う。「あえて同じ人と組まないことで自分のレパートリーを増やして、引き出しを多くしていきたい思いが強い。MVを撮るのも好きで、映画畑とは違った場所で得たものを異文化交流という形で自分自身の作品作りに活かしていきたい」と吸収に対する意欲は貪欲。現在の邦画スタイルにも異議申し立てがあり「1970年代の東映映画や角川映画にあった、エセ洋画感が好き。今の映画界は作品の中で洋画と邦画の区別がはっきり別れているけれど、洋画ではないのに洋画の空気を持ったオリエンタルな作品を作りたい。今回の映画がまさにそれで、川崎を舞台にしながらも、どこか無国籍感が漂っている」と完成に自信を込める。

 映画監督業を「最高のオモチャ箱」と表現する品川監督は「カメラのピントも合わせられない僕のような人間が、色々なスタッフさんの手を借りて自分の表現を作り出すことのできる、ワガママな職業。自分のやりたいことを言えば、そのまま実現するんだから“スーパーお坊ちゃん”ですよ」と楽しそう。創作に対する恐怖を覚えることはなく「僕の強みは、偉い人やベテランの役者さんにも無邪気に何でも言えるところ。そこでもし『それは映画のルールに反している』と言われたら、飲みに誘って映画に対する情熱を理解してもらうだけ」とすべてを自分のプラスに変えていく。

 それもそのはず「監督から降りて芸人に戻った瞬間、誰も何もしてくれなくなる。今日も取材がたくさん入っているのに、髭剃り一つないですからね。地方ロケのときにマネージャーも来ないし、ロケのときに財布を預かってくれる人すらいない。映画が終わった瞬間、現実世界に叩きつけられる」とお笑い芸人としての辛い現実を愚痴りながら「それを考えたら、映画監督としての時間は最高に幸せな瞬間。機嫌を悪くして時間をロスするなんてもったいない。隅から隅まで楽しみたい」とこれからも徹底的に“遊ぶ”構えだ。

 映画『サンブンノイチ』は、4月1日より全国公開。

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