工藤阿須加「職業を愛し楽しむ」 父・工藤公康から学んだ俳優としての覚悟
「その後、役者のオーディションを受けたら、あともう少しというところまで残ることができて。親に内緒で受けていたので、話をしたら、父親からすごく怒られて、辞退させられたんです。父には俳優の知り合いもいましたし『華やかに見えるけれど生半可な覚悟で務まる世界じゃない』って。その時は、『しっかりした思いがないままやってはいけない世界だ』と思いとどまったんです」。
工藤は自分なりに俳優という仕事に向き合った。スポーツで挫折を経験したことにより、別の世界でもどこかで大きなブレーキをかけて逃げ道を作ってしまうのでは……という不安もあったという。それでも「小さい頃より、父がストイックに野球に取り組む姿をみていて、自分が好きでやろうと思っている職業を愛し、楽しむことができなければ、第一線では活躍できない、先にはいけないって自分の中で感じるようになったんです」と考えを改めた。すべての経験を前向きに楽しめるようになった。
本作は「夢を持つこと」「父と子」というテーマが内在している。工藤にとっては、自分とリンクすることが多い作品だと感じているようだ。「完成した作品を観たとき、家族の顔が浮かびました。人が一番身近にあって大切にしなければいけないけれど、一番そのことに気づきにくいのが家族。人それぞれ家族の距離感って違うと思うのですが、家族の大切さを皆さんに伝えられる映画に出られたことは、かけがえのない貴重な経験でした」と作品に込めたメッセージを語ってくれた。(取材・文・写真:磯部正和)
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