岡田将生、ずっと待っていた“痛男”役に手応え 「共感のなさを楽しんで」

「ずっと待っていたんだという思いがあったんです」。俳優・岡田将生がそう語るのは、柚木麻子による同名小説を、廣木隆一監督が豪華キャストを迎えて実写化した映画『伊藤くん A to E』で演じた“モンスター級の痛男”伊藤だ。伊藤と同じく28歳の岡田に、クセのある役どころや、「やめようって思っていたときもあった」という役者に対する思いについて話を聞いた。
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容姿端麗で家柄も良いのに、自意識過剰で性格最悪な伊藤(岡田)と、彼に振り回される5人の女性たちの姿を描く本作。『悪人』『告白』でもクセのあるキャラクターを好演した岡田は、伊藤のような役を求めていたそう。「『悪人』とか『告白』からも、かなり時間が空いていて。20歳とかだったので、けっこうやっていなかったなと考えると、自分自身、クセのある役をずっと待っていたんだという思いがあったんですよね」。
芝居については「何が面白いって、役で制限がなかった」と述懐。伊藤の喜怒哀楽が激しいこともあり、「何をしても大丈夫」だったそうで、「思いっきり悲しんでいる顔でも、笑っている顔でも、伊藤は伊藤なんです。だから選択肢がものすごくあったので、いい意味ですごく遊べて楽しかったし、本当にいろいろな表情を出そうと思っていました」とも。
伊藤から得たものについては「何もない」と苦笑するも、考え方に変化が生じた。「無理して立っている自分もばかばかしくなってきて。こういう考え方の人もいていいんだなという風に思ってから、すごく肯定的に」と回想。「最後は本当にダメダメだけど、少し希望もあったりして。伊藤、ちょっといい働きをしているんじゃないかと思うようになったら、好きになって。そういう意味でも、影響を受けてはいないですけど、たまにちょっとおバカになってもいいんじゃないかって思うようになりました」と胸の内を明かす。
「もちろん人を傷つけて、女性を振り回しているんだけれど、伊藤に会うことによって、女性たちの本来の自分が抱えている本性や欲望などがあらわになっていくので、伊藤と会うことによって、女性もすごく成長しているんですよね」と考えを述べる。その女性の一人で、木村文乃が演じた矢崎莉桜は、脚本が書けない脚本家。岡田自身も、役者として芝居ができないと感じた時期があったというが、作品や人との出会いが救いになった。