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松たか子、“やりたいか”ではなく“挑戦するべきかどうか” 大切にする仕事選びのスタンス

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◆公演中は「変わったことはしない」 ウォーミングアップにぴったりの曲も告白

――公演中のルーティンはありますか。

松:ひたすら寝て食べて、公演して帰って、変わったことをしないことですかね。変わったことをするとそれに対応する体力も使うから、なるべく自分が気持ちよくいられるように、あまり無理せずというか。落ち着くのが楽屋だったり劇場だったりするので、早めに現場に入り、お裁縫が好きなので、自宅にいるとき余り布でちまちまとチクチク何か作って、楽屋に置いたりしていますね(笑)。無心になれる感じが好きなので。

――今回の作品の稽古について、松さんが「リトル・ドラマー・ボーイ(※クリスマスソングのスタンダード)を頭の中で鳴らしながら」とコメントされていて、思わず『大豆田とわ子と三人の元夫』を思い出しました。大豆田とわ子はよく鼻歌を歌っていましたが、松さんご自身、普段から鼻唄を歌ったり、頭の中で曲が流れたりしていることが多いですか。

松:ウォーミングアップのときに鼻唄歌いながら走ったりするのは、そういえば好きですかね。アップのときにすごく合う、地声と裏声があるちょうどいい具合の曲がいくつかあるんですよ(笑)。例えば秦基博さんの『鱗』。裏声もあって、ちょっと飛ぶ音で…。『アナと雪の女王』はアップにはとても向かない。あれはアップというより、むしろ歌うと消耗してそこで終わっちゃう曲ですから(笑)。


◆“コミュニケーションを諦めたくない”大豆田とわ子に共感

――映画、アニメの声優、舞台とさまざまなお仕事をされていますが、お仕事を選ぶ基準として大切にされていることはありますか。

松:「基準」というとおこがましいんですが、「松たか子」という名前をもらってお仕事させていただいている中で、松たか子という人にとってやるべきことは何だろうなと考えることですかね。自分がやりたいかどうかではなく、できるかできないかはとりあえず置いておいて、挑戦してみるべきことかというのが基準になっている気はします。

――松さんがドラマで近年演じられるのは、自由なようで繊細で、自分の中で割り切れない面倒くささに折り合いをつけながら生きていくような女性が多い気がします。そういったキャラクターとご自身に似ている部分はありますか。

松:似ているかは分からないですけど、大豆田とわ子という人をやっていてあんまり違和感がなくて(笑)。あの人も「面倒くさい」と言いながら人と関わっている、諦めていないところがやっていて楽しいところでもありました。自分のテリトリーを守って、ガチガチに鎧を着て生きていくみたいな人じゃなくて、「やっぱりめんどくさかったじゃん」と言いながらも、人と関わって生きていくところが私は好きだったので。私も決して社交的ではないんですね。心を開いているようで開いてないとよく人に言われるし(笑)。でも、人を見たり人を知ったりすることは好きだから、そういう意味ではコミュニケーションを諦めたくないという部分に共感できたし、自分もそうありたいなと思います。

――この舞台の後には、来年はミュージカル『ラ・マンチャの男』があります。松さんの中で舞台というのは他のお仕事と違う感覚がありますか。

松:自分のやること自体は変わらないですね。ただ、舞台は上手くいってもいかなくても、その日のものはその日のものでしかない。その儚さ、残そうと思って残せない何かが魅力なのかなと思います。幕は上がるし、下りるという感じがなんとなく好きなところですかね。


――松さんが演じられる作品は明るい悲劇に見えたり、悲しい喜劇に見えたりする広がりを感じます。ご自身ではコミカルとシリアスをどうとらえ、表現されていますか。

松:今まで意識はしていなかったですけど、今こうして質問していただいて、悲しい・暗い中に笑いがあるのも好きだけど、明るい・楽しい中にちょっと涙があるほうが自分は好きなのかもしれないと思いました。特に舞台だとシリアスな中に笑いを入れて「面白いでしょ?」とするのが、あんまり好きじゃない(笑)。それよりも、アハハって笑っているけど、なんか切ないねという瞬間の方が好きかもしれないですね。それに、現実は楽しいことばかりでもないし悪いことばかりでもない、くるくるいろんなことが日々起こると思うから、お話の世界でもやっぱりそういうものに魅力を感じますね。

――今後どういうスタンスでお仕事を続けていきたいというような理想はありますか。

松:良い作品に出逢いたい、出逢えるように頑張ろうということに尽きますね。それは映像でも舞台でも私の中では等しいです。だから、何かを変えようとは思わないけど、良い作品に出逢えたら良いなと思いながら、それに出逢っても良いような健康な自分でいたいものだなあという、それくらいです(笑)。(取材・文:田幸和歌子 写真:高野広美)

 舞台『パ・ラパパンパン』は、11月3日~28日東京・Bunkamura シアターコクーンにて、12月4日~12日大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演。


 ※松たか子/スタイリスト:梅山弘子(kiki inc.)、ヘアメイク:須賀元子(星野事務所)、衣装協力:ワンピース support surface

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