新海誠監督、最新作『すずめの戸締まり』で3.11に言及したワケを語る
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新海誠監督の最新アニメーション映画『すずめの戸締まり』の完成報告会見が25日に都内で開催され、新海監督をはじめ、声優を務めた原菜乃華、松村北斗(SixTONES)、染谷将太、伊藤沙莉、花瀬琴音、音楽を担当した野田洋次郎(RADWIMPS)、陣内一真が出席した。
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興行収入250億円超えの大ヒットを記録した映画『君の名は。』の新海監督の最新作で、日本各地の廃墟を舞台に、災いの元となる“扉”を絞めていく少女・すずめの姿を描いた本作。
新海監督は物語の着想が、『君の名は。』や前作『天気の子』のプロモーションで全国各地を巡った際に「ずいぶん人が少なくなった場所が全国に増えたことを実感した」ことがきっかけだったと明かし「かつてにぎやかだった街から人が少なくなっていった時、人は何をするのか? 家を建てる時は地鎮祭のようなことをやったけど、このままどうやって終わっていくのか? と思うことが増えて、場所を“悼む”職業のひとをアニメーションのキャラクターにできないか? と思った」とふり返る。
映画の中では、2011年3月11日に起きた東日本大震災についても言及されているが、この描写について新海監督は「いま、描かなければ遅くなってしまうのではないかという気持ちがありました。気づけば僕の観客の多くが10代で、共通言語、共通体験としての震災がどんどん薄くなっていって…。でも、いまであればまだ同じ気持ちを共有できるんじゃないかという焦りのような気持ちはありました」と語った。
さらに「2011年の3月末に東京で桜が咲くのを見て、『こんな時でも桜は咲くんだ』と心底驚いた記憶があります。こんな状況でも人間と関係なく桜は美しく咲いて、どこまでも冷徹で冷酷で、我々に無関心で、それなのにこんなに美しいことに衝撃を受けました。同じ感覚はコロナ禍での桜にも感じました。(自然の)冷徹さと鋭利な美しさを僕の仕事であるエンタテインメントの形で映画にできないかという気持ちはずっとあって、それが今ならできるかもしれないと思いながら作った映画が『すずめの戸締まり』でもあります」と思いを語った。
主人公・すずめの声を演じた原は本作への参加について「13歳、中学1年生の時に初めて『君の名は。』を観て、新海誠監督を知って『新海監督の作品をリアルタイムで見られる時代に生まれてきてよかった』と友達に話していた6年後に、まさか自分が携わらせていただくことになるなんて夢にも思ってなかったです」と感激を口にする。
扉を閉める旅を続ける青年・草太を演じた松村はひと足先に完成した映画を観て「本編を見ている間に何度も笑って、何度も涙が出てきました。そういうポイントが何度も訪れるんですが、そのたびに笑った理由も涙の理由と種類も違って、自分の中に『面白い』と思う感性にこんなに幅があったんだとか、こんなことに感動して、救われたりして涙が出るんだなと思って、作品を見てるんだけど、自分を見ているような気持ちになる、そんな不思議な作品でした」としみじみと感動を口にしていた。
映画『すずめの戸締まり』は11月11日より公開。