ジェームズ・キャメロン監督が込めた思い――『タイタニック』は人々の生きた証を描く深い人間ドラマ
映画『タイタニック:ジェームズ・キャメロン25周年3Dリマスター』が先週末より公開され、公開3日間で7万2351名を動員、1日の上映回数も限られているにもかかわらず、週末動員ランキング5位の大ヒットスタートを記録した。本作が世界中の人々の心をつかむ、単なるラブストーリーというだけではない魅力をおさらいしてみる。
【写真】反転して撮影したとは思えない! タイタニック号の出航シーン
世界中で一大旋風を巻き起こした1997年公開の映画『タイタニック』を現在の最新映像技術でよみがえらせた本作。『タイタニック』は、1912年に実際に起きたタイタニック号沈没事故をベースに、新天地アメリカを目指す画家志望の青年ジャック(レオナルド・ディカプリオ)と上流階級の娘ローズ(ケイト・ウィンスレット)の身分違いの愛とその行く末を描く物語だ。
親の意志で若くしていいなずけと結婚することになるなど、自分の思い通りにならない窮屈な貴族社会で苦しんでいたローズの前に、自由を好み生き生きと希望に満ちあふれた青年ジャックが現れ、2人は瞬く間に引かれ合っていく。感情の揺らぎが丁寧に描かれていくジャックとローズの“禁断の愛”の物語に、多くの人が心を奪われた。
しかし、そんなジャックとローズのラブストーリーだけがタイタニックの魅力ということではない。本作の監督・製作・脚本・編集を手掛けたジェームズ・キャメロンは「この映画を作るにあたって、私の目標はこの悪名高い船の劇的な出来事だけでなく、そこにあった短く輝かしい”人生”を描くことでした」と語っている。「タイタニック号とその乗客、乗組員の美しさ、高揚感、楽観性、希望を捉えながらも、この悲劇の根底にある人間の負の側面をさらけ出す過程で、人間の無限の可能性を示し、称えることです」と、本作に込めた思いをつづっている。
キャメロンの言葉にもあるように、『タイタニック』で描かれるのはジャックとローズの人生だけではない。当時不沈を誇った豪華客船タイタニック号で優雅な船旅を満喫していた一等客室の人々。移民として、アメリカに渡るために乗り込みアメリカでの生活に期待を寄せていた三等客室の人々。そして船の船長や船員、そしてディナーを彩っていた音楽家たち、タイタニックを造った会社の社長や船の設計主任。それぞれが、“1時間か、もって2時間ほど…”と劇中でも伝えられた沈没までの短い時間の中でどのように行動し、どうその最期を迎えようとしていたのか…。そこにあまたの人間ドラマが描かれている。
緊急事態の中でも必死に避難を呼びかける人、我先にと救命ボートに乗ろうとする人。最期を悟り身を寄せ合ってベッドに横たわる家族。避難する乗客の恐怖心を少しでも和らげようと音楽を奏で続ける演奏家たち。おのおのの最期の迎え方に注目すると、本作をより深く楽しめるのかもしれない。
そして、その中でも特にその人生に注目をしてほしいのが、ローズだ。タイタニック号の沈没後、凍るように冷たい海に投げ出されたローズは、ジャックとある約束を交わす。それは“必ず生き延びること―”。ローズはタイタニック号から生還したのち、ジャックとのこの約束を胸に生きていくこととなる。
劇中の最後、ローズが眠るベッドのそばに立てられた写真には、飛行機や馬に乗っているローズの姿が写し出されており、ローズが窮屈な貴族社会での生活から離れ、ジャックのように人生を満喫し自分らしく生き延びてきたことがそれらの写真から伝わってくる。「人生は贈り物だ。絶対に無駄にしたくない」。そんなジャックの言葉を体現したようなローズの人間ドラマは、どんな境遇や状況、場所にいる人々の心にも響くはずだ。
映画『タイタニック:ジェームズ・キャメロン25周年3Dリマスター』は、2月10日より2週間限定で公開中。