ウクライナ民謡を元にした歌に支えられ生き続けた戦時下の家族の姿を描く―映画『キャロル・オブ・ザ・ベル』7.7日本公開
映画
ウクライナ、ポーランドの合作映画『Carol of the Bells（原題）』が、邦題を『キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩（うた）』として、7月7日より全国公開されることが決定。これに併せてポスタービジュアルが公開され、オレシア・モルグレッツ＝イサイェンコ監督、プロデューサーのアーテム・コリウバイエフ、駐日ウクライナ特命全権大使セルギー・コルスンスキーからコメントが到着した。
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本作は、第二次大戦下のポーランドを舞台に、領土を奪われ翻弄されるウクライナ、ポーランド、ユダヤ人の家族が、子供たちを守り抜こうとする運命の物語。ウクライナの民謡をもとに生まれた有名な楽曲「キャロル・オブ・ザ・ベル」の歌に支えられ、ひたむきに生き続ける戦時下の家族の姿を描き出す。
1939年1月、ポーランドのスタニスワヴフ（現ウクライナ、イバノフランコフスク）にあるユダヤ人が住む母屋に、店子としてウクライナ人とポーランド人の家族が引越ししてくる。ウクライナ人の娘ヤロスラワは音楽家の両親の影響から歌が得意で、特にウクライナの民謡「シェドリック」＝「キャロル・オブ・ザ・ベル」を歌うと幸せが訪れると信じ、大事な場面で都度その歌を披露する愛らしい女の子だった。
しかし、第2次大戦がぼっ発し、スタニスワヴフはナチス・ドイツとソ連に交互に占領される。そしてポーランド人とユダヤ人の両親たちが連行され、娘たちだけがスタニスワヴフの家に残される。
ウクライナ人の母ソフィアは、残されたユダヤ人の娘ディナ、ポーランド人の娘テレサを自分と娘ヤロスラワと分け隔てなく守り通す。だが、さらに戦況が悪化。ナチスに自身の夫が処刑されるなか、3人の娘に加え、「この子には罪はない」とナチス・ドイツの息子をかくまうが…。
解禁されたポスタービジュアルは、ウクライナ、ポーランド、ユダヤの3家族がともに食卓を囲んで1枚の写真に収まっているもの。人種、国、文化の違いに関係なく、人として助け合いながら清廉に強く生きようとする、その想いを象徴するものとなっている。
2022年2月24日、ロシアによるウクライナへの侵攻が始まった。この侵攻が始まることを予感していたかのように2021年に本作を作り上げたのは、これまではドキュメンタリーを主戦場としてきた女性映画人オレシア・モルグレッツ＝イサイェンコ監督だ。
現在もキーウに住み、子を持つ母親でもあるオレシア監督は「この映画は、ロシアによるウクライナの本格的な侵攻の前に制作されましたが、その時点でさえ私たちが住む国は戦争中の状況でした。老いも若きも、ウクライナに生きる人々の中に戦争や悲劇的な出来事を経験せずに生き延びている人は一人もいませんので、この映画に取り組むことは私にとって非常に重要でした」と語る。
そして「今、この映画はさらに現代との関連性が高まっています。映画で描かれたように、実際の戦争において、女性や子供は常に戦争の人質です。妊娠中だった私の姉と姪は、占領地の地下室に28日間過ごすことを余儀なくされました。なので、私は私たちの映画が記憶から消し去られてはいけない過去を反映したものであり、そして未来はウクライナ人と世界にとってより良きものになるはずだと考えています」と訴える。
プロデューサーのアーテム・コリウバイエフは「この映画は戦争こそ人類が発明した最悪のものであると人々に訴えかける重層的な物語です」と語る。そして「物語は女性たちと子供たちに焦点を当て、そして脚本のクセニア・ザスタフスカ、オレシア・モルグレッツ＝イサイェンコという女性映画人によって制作されました。彼らは20世紀にこの国が直面した最も暴力的で、残酷な人災であった戦火の真っただ中を生きたポーランド人、ユダヤ人、そしてウクライナ人の女性の声を代弁しています。古来より女性は家族的な伝統と国家の文化的価値観を子供たちに託す役目を担わされてきました。より良い未来を築くために、新しい世代は過去を記憶しなければなりません」としている。
また「この物語において過去と現在を結び付けているのは、今や世界で最もポピュラーなクリスマスソングの一つとなった『キャロル・オブ・ザ・ベル』の基になったウクライナの新年の歌『シェドリック』です」と説明している。
駐日ウクライナ特命全権大使・セルギー・コルスンスキーは「ウクライナは古くから侵略され続け、特にロシア革命以降ソ連とドイツから脅かされ続けてきました。その後の第2次世界大戦下では最も激しい戦闘地域のひとつでした。置かれた立場も非常に厳しく、やはりソ連やナチスに侵略され、大戦が終わってもソ連に侵略されたのです」と話す。そして「この歌の基になったのは、ウクライナ人がここに存在しているよと、希望の声を届けてくれるウクライナに伝わる民謡です。この映画は激動する時代の流れの中で懸命に生きる家族を描いています。ウクライナ人としての尊厳を守り続けた両親の愛に育まれた子どもたちの無垢で美しい歌声は、我々の心の奥底に染み渡ります。未来を生きる子どもたちの平穏な日々を奪う権利は誰にもないのです」と言葉を寄せている。
映画『キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩』は、7月7日より全国公開。
