中島裕翔、アラブ人と恋に落ちるユダヤ人役に挑む「今の自分にはできないのではないかと…」舞台『みんな鳥になって』キャスト決定
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■演出・上村聡史
『みんな鳥になって』は、『炎』『岸』『森』に増して、ワジディ・ムワワドの決意を感じる戯曲です。それまでは、カナダ・ケベックで作品を創ってきたレバノン出身の劇作家が、かつて移民として拒否されたフランスに、今度は招かれる形で、パリを拠点に作品を創ろう、そしてこの地で生きようとする決意を感じます。それは世界を見つめる視点においても鋭角的で、今までは寓話性に包む形で描写していた中東も、今回は、勇を鼓するような筆力でイスラエルという固有名詞をそのまま剥き出しに、西洋の只中から我々現代にある種の“怒り”を突きつけます。
その決意を受けて演出者として、日本人の私たちも世界の一員であるという感覚を呼び覚ます作品に仕立てたいと思います。そして、清新さと深遠な表現を体得する頼もしい出演者八名とともに、今ある現在形の惨劇のなかであっても、物語と真実が照らす光に期待を抱けるような劇空間を皆さまに届けます。どうぞ、ご期待ください。
■中島裕翔
出演が決まったと聞いて、正直今の自分にはできないのではないかと思ってしまったくらい課題の多い作品ですが、チャレンジ精神を持って頑張りたいと思います。
この作品は人種や戦争、歴史にフォーカスを当てつつも普遍性を描いていて、大きなテーマを扱ってはいますが、僕が演じるエイタンも一人の人間なので、戯曲を読み込んで理解を深めていきたいです。自分の中にある小さな共通点を見つけて、それを広げていくような形でこの役に向き合っていきたいですね。エイタンが主人公ではありますが、様々な事情を持った人が出てくるので、それぞれに共感できるところはあると思います。
演出の上村さんは僕が初めて出演した舞台の『WILD』を観てくださっていて、その印象が残っていたから声をかけていただけたそうです。当時はわからないことだらけだったので覚えていていただけてありがたいですし、とても光栄です! 多くのことを学ばせていただきたいと思います。
エイタンという青年の成長物語でもあると思うので、作品の中で悩んだこと、考えたことがそのまま出せればいいなと思います。名だたる戯曲に素晴らしい方々が集まっています! 一生懸命頑張りますので、ぜひ劇場にお越しください。
■岡本健一
この作品を上演するにあたって大切にしたいことは、何なのだろうか?
愛するということなのか、信じるということなのか、自分の考えや言葉、行動は正しいのか、色々な思いもしない出来事が起こった時に、どのように対処して行くのか、はたして今の自分は、大丈夫なのだろうか?
ワジディ・ムワワドが描く、美しくリアルで刺激的な言葉の数々が、全身全霊で演じる俳優陣、そして観劇してくださる方々の心を鷲掴みにして、大切な希望を与えてくれるのだと思います。
演出家、上村聡史の創り出す『みんな鳥になって』、劇場にいる皆様と一緒になって、どこまでも自由に羽ばたきたいと願っています。
■岡本玲
今でも台詞の一節をそらで言えるくらい、自分にとってとても大きな存在である前作『森 フォレ』。
引き続きこの座組に参加できること、演劇猛者の皆さまとご一緒できることを、心から嬉しく思います。
と同時に、前回は初めましてでがむしゃらにぶつかったのが功を奏した気がするので、もうそうはいかないぞと自分に喝を入れています。
ワジディ・ムワワドの力強く美しい言葉たちに血を通わせ、命の、怒りの"熱"を届けられるよう、誠心誠意作品に向き合いたいと思います。
よろしくお願いいたします。
■那須佐代子
ワジディ・ムワワド×上村聡史氏のタッグには『炎 アンサンディ』の初演・再演に出演させていただきました。美しい言葉の群れとめくるめく展開、そして強烈なメッセージをつきつける衝撃的な作品で、私にとって今も強く心に残る宝となった経験でした。
この度、またあの世界観の中に素晴らしい共演者の皆様と共に没入できることが大変嬉しく興奮する思いであると同時に、ガザ侵攻など様相を変えながらも連綿と続いている民族対立の厳しい現状と地続きであることを忘れずに、真摯にこの作品に向き合いたいと思っています。