「父さんを死なせたくない!」心揺さぶる父と息子の感動作『靴ひも』予告完成

イスラエル・アカデミー賞で8部門にノミネートされ、助演男優賞を受賞した映画『靴ひも』より、予告編が解禁された。
【写真】靴ひもを結ぶ―その動作が、二人の運命を変える。 映画『靴ひも』フォトギャラリー
本作は、一度は家族を捨てた父と、発達障害のある息子が約30年ぶりに一緒に暮らすことになり、悪戦苦闘しながら本当の親子関係を築くまでを、優しさとユーモアたっぷりに描いた感動作。父親役のドヴ・グリックマンがイスラエル・アカデミー賞で助演男優賞を受賞したほか、アメリカ各地の映画祭でも観客賞を多数受賞。2018年の東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門にて上映された。
タイトルの「靴ひも」は、息子の苦手な動作の一つである「靴ひもを結ぶこと」。父と息子の関係の変化と成長の象徴として、本編には三度靴ひもを結ぶシーンが登場する。
予告編は、突然死んでしまった母親の墓前で、息子のガディが嘆き悲しむ場面からスタート。続いて、約30年ぶりに一緒に暮らすことになった父ルーベンとガディが、時に衝突しながらも絆を深めていく様が温かくユーモラスに描かれていく。
しかしそんなある日、ルーベンは末期の腎不全と診断され、息子ガディからの腎臓移植を勧められることに。「36年無視したのに臓器まで奪うなんて」と拒否しようとするルーベンだが、ガディは「僕は(自分の臓器を)提供したい。僕は特別な支援を必要としてるけど、岩のように強い心を持っているんだ。僕は父さんを死なせたくない!」と主張。互いを思いやる2人のやりとりが感動的に描かれ、最後は笑顔で歩くガディの姿で幕を閉じる。
◆監督からのメッセージ「主人公が、愛情、感謝の念、憧れすら抱いてもらえることを願っています」
自身も発達障害を持つ息子の父親であるヤコブ・ゴールドヴァッサー監督は、本作について「約10年前、ある親子の実話を聞く機会がありました。腎不全を患う高齢の父親に、知的障害を持つ息子が自分の腎臓を提供しようとしたそうです。私にも特別支援を必要とする息子がいるので、私が映画化するにふさわしいエピソードだと思われたのでしょう。しかし私はこのような重い題材を扱うことに抵抗があり、作品ではあくまでも他人の問題を扱いたいと主張しました。複雑で大変な自分自身の問題に向き合うことは避けたかったのです」と当初は題材に拒否反応を示したことを告白。
続けて「何年か経ち、私は自分の不安を克服し、映画が障害を持つ人々に対する世間の見方を変えるきっかけになるかもしれないと考えるようになりました。そのためには、主人公が正確に描かれていること、さらには主人公が人間味にあふれ、前向きで、ユーモラスで魅力的なキャラクターであることが重要でした。そして私は、長年の協力者である脚本家のハイム・マリンを誘い、このプロジェクトに身を投じました」と映画化に至るまでの心境の変化を説明した。
そして「私と脚本家はルーベンと息子の複雑な関係に焦点を絞り、疎遠だった二人が深い愛情で結ばれていく過程を通して、この難しい題材から希望に満ちた物語を作り出しました」と作品に込めた狙いを明かし、最後は「障害を持つキャラクターに対し、観客は同情心や哀れみを抱きがちです。意志の力や知恵や正義感によって困難を乗り越え成長していく『靴ひも』の主人公が、観客に同情心などではなく愛情、感謝の念、憧れすら抱いてもらえることを願っています」とメッセージを寄せている。
映画『靴ひも』は10月より全国順次公開。