妻の不貞を疑う夫、絡み合う視線 『異端の鳥』人間の“嫉妬”を描き出す本編映像

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10月9日より公開される映画『異端の鳥』より、本編映像が解禁。若い妻の不貞を疑う男をはじめとする大人たちの視線が絡み合う、人間の“嫉妬”を描く場面を収めている。
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本作は、ポーランドで発禁書となった作家イェジー・コシンスキによる“いわくつきの傑作”を、チェコ出身のヴァーツラフ・マルホウル監督が11年もの歳月をかけて映像化した問題作。
本作でたびたび描かれるのが人間の“嫉妬”。今回解禁されたのは、そのひとつとなる本編シーン。疎開先の叔母が急死して以降、村から村へと地獄の旅路を続けていた主人公の少年は、ある村で脅され、村人に川に落とされてしまう。本編シーンでは、彼が穏やかな水流に運ばれたどり着いた場所でのその後を描いていく。
少年は若い男に助けられ、彼が作男として暮らす粉ひき小屋の主ミレル(ウド・キアー)の家に運ばれる。ミレルは幼い少年を受け入れること自体は拒まなかったが、その姿を一瞥(いちべつ)し「そいつは不幸を呼ぶぞ。不吉なガキだ」と言い捨てる。ミレルには若い妻がおり、ふたりとも働き者だったが、嫉妬深いミレルは妻と作男の不倫を疑っていた。
映像にはミレル、その妻、作男3人それぞれの視線が絡み合う様子が映し出されており、彼らが向ける視線の先に待ち受けるものと、自分の居場所を作ろうと懸命に働く少年がそこにどう関わっていくのか、続きが気になる映像となっている。
ミレルを演じたキアーは、役柄について「彼は善人だ。嫉妬心が強いが、人は嫉妬心から人を殺すこともある」と、その嫉妬の成れの果てを示唆するコメントを残している。
本作は、「家に帰る」という強い願いを胸に村を渡り歩く少年が、行く先々で出会う大人たちの名前を取って9つの章で構成されている。その中でも人間の残虐性が最もあらわになるパートのひとつといえるのがこの<ミレルの章>。作品で描かれる残虐性について、マルホウル監督は「原作『ペインティッド・バード』を読んだ多くの人は、その暴力と残虐性にショックをうけました。イェジー・コシンスキの暴力の概念はすごく不快だと思う人もいると思います。だがこれは一次元的でもないし、二次元的ですらない。コシンスキにとって暴力とは人類の本質を明らかにするものなのです」と映画製作にあたっての表明文で記している。
映画『異端の鳥』は10月9日より全国公開。