ベネチア国際映画祭、クリステン・スチュワート演じるダイアナ妃に拍手 日本公開も決定
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女優のクリステン・スチュワートがダイアナ元皇太子妃を演じる映画『スペンサー(原題)』が、第78回ベネチア国際映画祭コンペティション部門でワールドプレミアを迎え、現地時間9月3日に公式上映と記者会見が行われた。また、本作の日本公開が、ダイアナ元妃没後25年となる2022年に決まった。
【写真】可憐なドレスアップで登場したクリステン・スチュワート 第78回ベネチア国際映画祭にて
本作は、ダイアナが1991年のクリスマス休暇に、イギリス王室のメンバーとともにノーフォークにあるサンドリンガム・ハウスで過ごす3日間を描く物語。チャールズ皇太子との関係は冷え切り、王室の中でも浮いた存在となっていたダイアナが、離婚を決意するまでの心の動きを綴っている。監督は、『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』で第73回ベネチア国際映画祭脚本賞を受賞したチリの鬼才パブロ・ラライン監督。同映画祭では常連なだけに、本作でも受賞に期待がかかっている。
女優ジーン・セバーグを演じた『セバーグ』がプレミア上映された第76回以来、2年ぶりのベネチア映画祭参加となったクリステン。メイン会場のサラ・グランデ前のレッドカーペットに現れたクリステンは、シャネルのリボンベルトがポイントのペパーミント・グリーンのスリップ・ドレスに、同素材の細身のパンツを合わせた可憐な装いで登場。タキシード姿のパブロ・ラライン監督と共に、詰めかけたカメラマンたちの前でフォトコールに応じた。
満席のサラ・グランデ(1200席)に入ったふたりは大きな拍手とともに迎えられ、上映後には「ブラボー!」という声と共に、約5分間のスタンディングオベーションを受けた。
会見冒頭、司会者から「なぜ、ダイアナというテーマを選んだのか」という質問に対し、ラライン監督は「私の母に気に入ってもらえる映画を作りたいと思っていました。ダイアナは著名で美しさにあふれたアイコンでしたが、同時に彼女は母親でもあり、私の母のような普通の人々に深く共感させる力をもった人でした。非常に恵まれた環境に生まれ、貴族出身の人が、なぜあれほどまでにごく普通の人物でいられたのかに、私は長年興味があったんです」と説明。
クリステンも、監督の言葉を引き継ぎ、ダイアナの人々の心に訴えかける力について「彼女の生まれ持った力。この世界には、突き抜けたエネルギーを持っている人がいますから。ただ、彼女がどんなにカジュアルで魅力的であったにも関わらず、孤独で寂しい思いをしていたことが、本当に悲しい。人に喜びを与える代わりに、心の中では嫌な思いをしている。人とのつながりを心から欲し、エネルギーを惜しみなく使っている…歴史上、そのような人はいなかったでしょう。だから、彼女は本当に光輝くように飛び抜けた存在となったのだと思います」とダイアナの魅力的な人となりについて語った。
さらに、「誰もが彼女のことを知っているような気がするのは、それが彼女の才能だからであり、親しみやすく、彼女が自分の友達や母親のように感じられるところに、彼女の美しさがありました。しかし皮肉なことに、彼女は心の内を知ることができない人物であり、心の底では孤独になりたくない人物だったのです」とコメントした。
通常の伝記映画と異なり、ダイアナが離婚を決意する1991年の3日間に焦点を当てた構成としたことについて、監督は「彼女の長い人生を振り返るのではなく、大きな危機に瀕した瞬間を選べば、彼女の本質にうまく迫ることができるのではないかと思った」と、その意図を明かす。
一方、ダイアナと同様にパパラッチの標的となった経験もあるクリステンだが、セレブリティの私生活をスクリーンで見せることについて聞かれると、「他人の私生活に立ち入ることと、芸術が世界にもたらす多様性には違いがあります。この映画は何か新たな情報を提供するわけではありません。この映画の狙いは人々の間にある溝を埋めることにあると思います。仮にもし誰かが私についての映画を作ることがあったとしても、私は盗用されたとか、何かが奪われたとは思わないと思います」と本作への誇りをにじませた。
映画『スペンサー(原題)』は、日本で2022年公開。
※記事初出時、一部情報に誤りがありました。訂正してお詫び申し上げます。