松岡充、“答え”求め続ける中で出会った運命的な役「僕自身の軌跡や苦悩が完璧にシンクロ」
――作品のテーマにもつながるかと思うのですが、松岡さんご自身が、自分らしさを感じる瞬間、素の自分を実感できるタイミングはどのような時でしょうか。
松岡:僕個人として考えたときに、「1人になりたい」という時はあります。僕の中にいるもう1人の自分、いわゆる“自分らしい自分”とちゃんと対峙(たいじ)できるのは、1人になった時。活動の中でいろんな人と接し、その期待に応えるようさまざまなことを考えて頭の中がパンクしそうになった時、一回すべてを更地に戻さないとうまくスイッチを入れなおすことができません。スマホのデータなどもすべて消して、ゼロにしたくなるような瞬間があります。すべてフラットにすることで、自分らしく生きられると感じるというか。
僕、「キープする」という言葉がすごく苦手なんですよ。キープって、そこに留まり続けることだから。嫌悪感すら覚えます(笑)。『SHOWMAN』のキャッチフレーズにもあるように、人生は浮き沈みがあってこそですし、何の傷も負わずにずっと満足してキープし続けるなんて、不可能です。だからこそ、毎回自分で壊して、壊れて、また1から積み上げていく。そうやって傷つきながらも這い上がり、再び積み上げていくプロセスにこそ、本当の喜びや幸せがあるんだと思っています。
――その“気付き”はいつ頃に得られたものですか?
松岡:原点としていえるのは、30歳になる手前くらいでしょうか。当時はメディアに出て、求められるものに応え続け、数字や評判といった結果が出るたびに喜びの反面、「これは本当の自分ではない」感覚があって、心がボロボロになっていきました。一度すべてをぶっ壊して辞めてしまおう、とさえ追い詰められた時もありました。じゃあどこまで手放すのか、という話ですよね。バンドをやめるのか、今の活動をやめるのか――または、松岡充をやめてしまうのか。そんな中で、とあるきっかけがあって思いなおすことができて、創り上げたのが1998年にSOPHIAがリリースした『ALIVE』というアルバムです。
『ALIVE』は自分の生き方そのものを変えてくれた作品ですが、なぜ変わることができたのか、その明確な答えは当時からずっと分からないままでした。今、ちょうど『SOPHIA TOUR 2026 “We Believe ALIVE”/“そして僕らは老けて行く”』というツアーで、この『ALIVE』を振り返るような形をやっていますが、28年経った今、ツアーで僕はその答えをオーディエンスに求めてるのかな、きっと見つかるんじゃないかと思っています。これって、ネブラがスアに自分の存在理由を求めた姿とまったく一緒だと思うんですよね。

――松岡さん自身も“あの頃の自分”を振り返っているようなタイミングで、ネブラという役に出会われたことも、どこか運命的に感じてしまいますね。
松岡:本当に、劇中で描かれる物語と、僕自身のアーティストとしての軌跡や苦悩が完璧にシンクロしているように思います。劇的な運命を感じた作品といえば、過去を振り返っても『LAZARUS‐ラザルス‐』などごく一部ですが、このミュージカルも間違いなくその作品です。これまでの自分の歩みと作品のテーマが同じ軸で重なり合っているこのタイミングで出演できることは、本当に運命的で最高のことだと感じています。
(取材・文:宮崎新之)
ミュージカル『SHOWMAN~4番目の影武者』は、2026年9月1日から13日まで、東京・新国立劇場 小劇場にて上演。
【公演概要】
ミュージカル『SHOWMAN~4番目の影武者』
9月1日(火)~9月13日(日)全17公演
新国立劇場小劇場
【出演】
松岡充 潤花 藤岡正明 万里紗 福井晶一 福室莉音
【脚本・作詞】
ハン・ジョンソク
【作曲】
イ・ソニョン
【翻訳】
宋元燮
【上演台本・訳詞・演出】
シライケイタ
【音楽監督】
国広和毅
【演奏】
前田涼子(Pf)、国広和毅(Key)、熊谷太輔(Perc)、大野萌子(Trp)、磯部舞子(Vn)、島津由美/平井麻奈美(Vc)
【スタッフ】
振付・ステージング:木下菜津子
美術:長田佳代子
照明:横原由祐
衣裳:半田悦子
音響:岡田 悠
ヘアメイク:田中エミ
演出助手:有坂美紀
稽古ピアノ:前田涼子
舞台監督:川除学
票券:サンライズプロモーション
制作:横井佑輔、大友泉
プロデューサー:宋元燮、石橋千尋