身に覚えのある痛みを思い起こさせ、静かに問いを発するハラスメント映画『アシスタント』
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そんなジェーンに、自分の会社員時代と通じるものを感じ、当時のことをいろいろと思い起こさせた。その時代は“#Me Too運動”が起こるはるか前で、セクハラをされても「我慢してうまく切り抜ける」のが社会人の当然のスキルとされていたと思う。自分より圧倒的に地位も収入も高い中高年男性たちが、セクハラやパワハラをしてきたり、さらには「国のために早く結婚して子どもを産みなさい」と説教してきたりしても、相手を不快にさせないよう気を遣いながら受け答えをしていた…あの日々が蘇ったのだ。
恐らく誰もが身に覚えのある痛みを思い起こし、ジェーンの状況をリアルに感じ取ることができるのではないだろうか。本作からは、こういった状況を放置してよいのかという、あくまで声高にではなく静かな問いかけを感じた。ジェーンが最後にとった選択は、自分だったらどうするか簡単に答えは出ない。(文:古川祐子)
映画『アシスタント』は公開中。