ブラッド・ピットがひたすらカッコいい『F1(R)/エフワン』 本物にこだわった“体験映像”も圧巻
本作最大の魅力は、文字通り”実際に乗っているかのような映像体験”である。宣伝でも大々的に謳われているものの、それ自体使い古された表現で説得力に欠けてしまうが、実際のところ、本作はこれまでのカーアクション映画の撮影とは比較にならないくらい、というよりも、アプローチそのものが違っていた。
通常のカーアクションは、撮影許可された公道にカメラを置き、用意した車をさまざまなアングルから撮影、時には車内にカメラを置いて臨場感を演出する。しかし本作が描くのは映画的カーアクションではなく、実際のF1(R)レースの内部である。数台のカメラを搭載した撮影用のF1カー(実際にはF2マシンの改造車)を製造し、F1世界選手権が行われる各国の実際のサーキットを走行しながら撮影されている。それはサーキット内にとどまらず、カメラはレース場のピット内部や戦略会議、マシン開発部、ドライブシミュレーターにまで踏み込んでいく。
映画『F1(R)/エフワン』場面写真 (C)2025 WARNER BROS.ENT.ALL RIGHTS RESERVED.
実際のレース場では、メルセデスやフェラーリなど錚々たるレーシングチームのガレージがズラリと並ぶ中に、映画の架空のチーム” エイペックスGP”のガレージまで用意されたというから驚きだ。普通こんなことは許可されないので、そもそもほかの映画にマネできるものではない。
さらに本作には7度のワールドチャンピオンに輝いた現役レジェンドドライバーのルイス・ハミルトンが、出演だけでなく製作総指揮という形でも参加。ハミルトンはストーリーの構築から、映画の効果音に至るまで細かく製作陣にアドバイスしており、そのことがこの映画のリアリティに大きく貢献している。
そして、本作を楽しむうえで”音”も非常に重要な要素であることを付け加えたい。エンジンの轟音、タイヤの擦れる音、ブレーキ音、アクセルやギアチェンジの音、そして観客の大歓声。『デューン 砂の惑星PART2』でアカデミー賞を受賞した音響ガレス・ジョンが、「最も難しかった」とするF1(R)サーキットのレースシーンは、マシンに大量のマイクを仕込むことで、さまざまな音が入り混じる環境の中でもマシンの動きを正確に把握し、スピード感の演出に大きな役割を果たした。
映画『F1(R)/エフワン』場面写真 (C)2025 WARNER BROS.ENT.ALL RIGHTS RESERVED.
筆者は本作をIMAX劇場で鑑賞したが、これまでのレース映画が目指した臨場感を超えて、まさに本物のサーキットでF1カーに乗り、ドライバー目線で時速320キロを体感する映像に圧倒された。その上で、フレキシブルに動き回る映画ならではのアングルや、エンジンをはじめとした各種の効果音に乗せられ、座席で何度かブレーキを踏みそうになったほど。抜きつ抜かれつのレースシーンでは、気が付くとひじ掛けをしっかりつかんでいた…。
本作はさまざまなラージフォーマットで上映されているので、少しでも上映設備のいい劇場でご覧いただくことを強く推奨する。