今ハリウッドが求める俳優ティモシー・シャラメの“魔法”――『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』で魅せた圧倒的な力
本作はミュージカル映画であり、シャラメの歌唱とダンスも大きな見どころだ。しかし、ここでも彼の才能は「上手さ」とは別のベクトルで光っている。
ブロードウェイのスターのように朗々と歌い上げるわけではない。彼の歌声は、あくまで「セリフの延長」にある。例えば、代表曲「Pure Imagination」を歌うシーン。彼は声を張り上げるのではなく、まるで隣にいる誰かに秘密を打ち明けるように、優しく、繊細に歌う。その息遣いには、夢への憧れと、ふとした瞬間に壊れてしまいそうな儚さが混在しているのだ。
「彼がこれから何を伝えるのか」、耳を傾けたくなる。それは、やはりシャラメ自身が持つ従来の掴みどころのなさやユニークな存在としての魅力あってこそのもので、浮世離れしたキャラを演じるうえでの説得力にもつながっている。
映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』(2023)より 写真提供:AFLO
また、基本的にウォンカというキャラは原作、そして映画化されてきた作品においても、アセクシャル、あるいは性的指向が著しく欠如した人物として描かれてきた。彼を描く上で重要なのはその想像力や無邪気さであり、大人の恋愛や性的なテーマは避けられてきたと言っても良い。そういう点でも、ブロードウェイで活躍するような筋肉質で男性的な俳優より細身の身体と中性的な美しさ、そしてオリジナリティを持つシャラメが最適人だったように思う。まさに演技技術を超えた、彼自身が持つスターとしての磁力が、この映画を成功に導いたと言っても過言ではないだろう。
それでいて、相手役を輝かせるための「受けの演技」も極めて巧みなのがシャラメのすごいところ。特に、相棒となる少女ヌードル(ケイラ・レーン)に向ける視線の温かさは特筆すべきだ。彼女の心に寄り添い、交流を通して芽生える「彼女の生活を良くしてあげたい」という気持ち。その優しさは、これまで描かれてきた“独善的になりがちな天才”というウォンカのキャラクター性において新しい、そしてシャラメならではの持ち味となった。

